第9話

「はい!やりますね」


はるさんのドレスのファスナーを上げ…上がらないな。


「サイズこれ合ってないんじゃ?」


「…よくあるんです。少しはだけた服のとき…合わないこと」


声がだんだん小さくなった。このドレスは肩を出してるやつだ。綺麗な背中は、なんだか寂しそう。


「…そのときどうしてました?」


とりあえず俺も声を小さくする。いつもうるさいって言われるし。


「…前…旭川あさひかわさんに言ったら、胸を触られて寄せられて、無理やり着せられました…。だから…東京は…嫌」


「え?東京の人じゃないんですか?」


「…はい、沖縄のモデルなんですけど、どうしても人がいないからって…」


「沖縄かぁ〜暑いとこですよね?」


「…はい」


うーん、それってたぶん男でしょ?名前忘れたけど…あの人かな?また俺が報告したら、セクハラするかもしれない。最悪すぎ。


「ファスナー上がらないのはまずいんで、俺がちょっと調整しちゃいましょうか?」


「え?」


はるさんはこちらを、不安そうに振り返った。


「俺、裁縫得意だから!一旦脱いでもらって、それ貸して下さい!」


「あ、はい…わかりました」


素直に更衣室に移動してくれた。なので、ドレスを受け取ってすぐに調整開始。ファスナーの位置は真ん中の正しい方がいいな。なら、両方を広げるしかないな。縫い合わせを解いて、調整していこー。解いた糸使って縫うかな〜


餅月もちづきさん、はるさんは?」


「あ、今着替えてますねー」


たぶんメイクさんと、男の人が2人でしゃべってる。

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