『 最 期 』

揺井かごめ

1.子どもの■を守って■ぬ

「ひこうき、いまどこ?」

「まだ日本だよ」

「おとうさん、つぎにいくくにはどんなところなの?」

「お父さんも子どもの頃に行ったきりだけど、凄く綺麗なところだよ。星が凄く明るくて、とってもキラキラしてるんだ」

「きらきら〜?」

「キラキラ〜! だ」

「みてみたいなぁ」

「お父さんがいっぱい見て、いっぱいお話ししてやるからな」

「うん!」


   ◆ ◆ ◆


「おとうさん……なんのおと……?」

「お星様が落ちてくる音だよ」

「おほしさま! おっこちるの?」

「そうだよ」

「どうしてみんな、わーわーいってるの? ないてるこえもするよ?」

「・・・・・・お星様が落ちてくるせいで、飛行機が一回 止まらなきゃいけなくなったんだよ。文句を言ってるんだ」

「ふーん。けがみじかいのね」

「そうそう。でも、ケじゃなくてキだよ」

「がたがたしたり、ゆらゆらしたりしてるのは? なんで?」

「お星様が来て嬉しいから、運転手さんが、もっと楽しくなるように飛行機を揺らしてるんだ。ジェットコースターと一緒さ」

「じぇっとこーすたー! おおきくなってからのやつ! いいの? おおきくなってないよ?」

「平気だよ、今日は特別。そんなことよりお姫様、お母さんからメールが来たよ」

「おかあさん‼ ほんと⁉」

「ほんとほんと。『私達のお姫様の声が聞けなくて寂しいよ〜』って。 『大好きだよ〜』って」

「おかあさんはわたしがだいすきだね!」

「そうだよ。だから、お父さん達も『大好きだよ〜』って動画とって、送ってあげない?」

「あげる‼」

「じゃあ、お父さんがせーのって言ったら、一緒に『お母さん、大好きだよ!』って言おうね。オッケー?」

「うん! おっけ!」

「良い子だ、お姫様。 じゃあ撮るよ。 せーの!」



 ──死因:事故死

      (子どもの夢を守って死ぬ)

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