古の泡沫
10まんぼると
運命
「ねぇ、聞こえる?」
どこか遠くから私を呼ぶ声が聞こえる。
「ねぇ、聞こえる?」
聞き覚えのない声に私は尋ねる。
「ねぇ、あなたは?」
そう言った瞬間私は夢から醒めた。
「今のは...夢?」
普段夢なんて気にしないのだがさっきの夢だけは胸につっかえるような感覚がして頭から離れない。時計を見るとまだ3時半だった。学校までまだ時間があるので私はもう1回寝ようと目を瞑った。
学校に着くといつもと変わらない喧騒に包まれた空間が広がっていた。幼なじみの
「おはようー」
「おはよう、
「おはー」
「というか、夢凪サッカー部の集まりあるんじゃないの?」
「やっべ、そうじゃん。教えてくれてありがとー」
「あいつよくあれで部長としてやっていけてるね」
「まあ実力は本物だからさ」
「そうだね。今日も3人で帰ろっか」
「うん」
そんな会話をしながら私は窓側の自分の席に座った。
授業中今日の夢について考えようと決めていたが、その時にはすでに夢の内容を忘れていて思い出すこともなかった。
帰り道、普段と変わらず3人で楽しく話しながら歩いていた時に、私は何かの気配を感じた。気配がする方を向くとそこには古びた鳥居が立っていた。いつも見慣れているはずなのに異様な冷気を感じる。気づくと夢凪と藍空が先を歩いていたので急いで私は追いかけた。
「あの鳥居さ、いつもと雰囲気違くない?」
「別にいつもと変わらないけど」
「そうだね。なにかおかしい訳でもなかったよ」
「えー、本当に?私の勘違いなのかな」
「きっとそうだよ。疲れてるんじゃない。しっかり休んでね」
「ありがとう」
学校から10分くらい歩くと私の家が見えてくる。
「じゃあまた明日ー」
「ばいばいー」
「またね」
「あれ、ここは何処だろう」
見渡す限り水中が広がっている。水で敷き詰められた空間は多種多様な魚が泳いでいてとても神秘的な場所だ。所々光が射し込んでそれがよりいっそう非現実的な場所にいると思わせる。辺りを見渡しているとかなり遠くの方に建物があった。
「なんだろう、あれ」
私はあの建物に向かって泳いだが、いつまで経っても距離は縮まず、まるで私が止まっているような感覚がした。そして不意にひとつの事に気づく。自分のの体がぼやけて見える。その瞬間、
「くうぅぅーーん」
後ろから巨大な魚が私の事を飲み込もうとしてきた。抵抗する間もなく私は魚の餌食となった。
それと同時に目覚まし時計が部屋に鳴り響く。目覚ましを止めて朝ごはんを食べて鞄を持つ。そしてドアを開けたとき、私は焦燥感に駆られ走り出す。自分の意思ではない何かに操作されているようだ。そして気づくと私は鳥居の前に立っていた。誘われるように境内に入ると本堂の中にある池の前に1つの紙が置いてあった。
『夢の海に空と波が行合はば夢のまことの居場所わからむ』
「これは何なんだろう?」
疑問に思って考えたが何一つとしてピンと来ない。腕時計を見ると時計の針が8時半を回ろうとしていた。
「やばい授業に遅れる」
急いで謎の紙を制服のポケットに入れ、学校へ全力で走った。
「おーい。水波おせーよ」
一応授業の始まるギリギリに着いた。こういう時に学校と家が近くて良かったと思う。
「ごめん!寄り道してたら遅れた」
「水波が遅れるなんて珍しいね」
「神社でこんなものを見つけてさ。2人はなんか知らない?」
「いや特に。夢凪は何か分かる?」
「全く、どうせなんかの神社の資料なんじゃねーの。俺らには関係ないって。でも、まぁなんか気になりはするな」
「そうだな、とりあえずチャイム鳴ったから座ろうか」
一限目は古典。半分睡眠時間のようなものだ。特に一限となるとマジで眠くなる。でも今日はそんな風にはいかなかった。
「地方ごとによって、沢山の伝説があるのは知っていますか。その中でもこの町の伝説は神社の池に入ると何かが分かるというものです。実際に本当のことなのかは不透明ではありますが多分創作でしょう」
この話が今日の朝の出来事と多少関係しているのかもしれないそう思うと授業どころではなかった。授業後すぐに先生に紙を見せて何か知ってるか尋ねたがいい結果は得られなかった。ピッタリ時期が重なったこの2つの事象は偶然なのか必然なのか。私は必然だと思う。そしてもし必然だとして、一体どのような意味が込められているのか。
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