【悲報】俺のダンジョンを襲う迷惑系配信者にエロトラップを仕掛けて分からせしたら、配信切り忘れてうっかりバズった件。

ぽんぽこ@書籍発売中!!

ダンジョン食堂は年中無休です。


 ダンジョン食堂の朝は早い。


「ふわぁああ~、眠い……」


 薄暗い洞窟の中をフラフラと歩きながら、欠伸を噛み殺す。


 本日の睡眠時間は3時間程度。

 遅くまで仕込みをしていたせいで、かなりの寝不足だ。



「えーっと。昨日は生姜焼き定食の注文が多かったんだよな。ボア肉でも狩っておくか」


 疲れが取れたとは言えない状態だが、開店前に食材を補充しておかねばなるまい。

 こうした仕入れも、店主である俺の役目なのだ。



「ん? ああ、アレは……」


 道の端で寝転がっているのは、居住フロアの管理者であるサキュバスクイーンのサキさんだ。

 狩猟フロア以外ではモンスターが襲ってこないとはいえ、さすがに心配になる。



「おぉい。サキさん起きろ、朝だぞ~」

「んうぅ……その声はナオト様ぁ?」


 甘ったるい声で俺の名を呼ぶと、彼女は気怠そうに体を起こした。

 着ているビキニアーマーの隙間から、豊満な胸がこぼれ落ちそうになり、慌てて目を逸らす。


「また酔い潰れたのか? そんなところで寝ていると、風邪をひくぞ?」

「んふぅ……そうなんですぅ」


 目がとろんとしているが、これぐらいならまだ大丈夫。

 こんな見た目でも、俺よりも強いのだから恐ろしい。



「マスターはお散歩ですか~?」

「違うわ! 狩猟フロアで仕入れ作業だよ」

「相変わらず多忙ですねぇ。たまには、ゆっくり休まれた方がいいですよぉ? それにぃ……」


 部下である私にもっと構ってくださぁい、と上目遣いで俺を見つめるサキさん。

 その目は潤んでおり、明らかに俺を誘っている。


 さすがはサキュバスの女王。男の扱い方を熟知しているな。



「よいしょっと。うぅ~ん、やっぱりベッドの上じゃないと体がバキバキですぅ」

「当たり前だろ。っていうか、ちゃんと服を着ろよ」


 サキさんは立ち上がって伸びをする。

 その際も大きな胸が揺れ、俺は目を奪われた。


(くそぉ……こんなことで時間を潰している暇はないっていうのに)



「さ、マスター。行きましょうか」

「ん? 何の話だ?」

「こうして会えたんですしぃ、私もマスターのお手伝いをさせてくれません?」


 それは嬉しい提案だけど……サキさんは寝起きで大丈夫なのだろうか。


「えへへ、心配してくれるんですか? 優しい♡ でも危ないときはマスターが守ってくださるから平気です♪」


 上機嫌のサキさんは妖艶な笑みを浮かべ、俺の腕に絡みついてきた。

 彼女の大きな胸がむぎゅっと肘に押し付けられ、俺は必死に抵抗した。


「こ、こら! その胸を押し付けるな!」

「んふふ……照れていらっしゃるんですかぁ? お可愛いですねぇ」

「う、うるさい! さっさと離れろ!」

「んふふぅ、嫌です~」


 その状態のまま、サキさんは歩き始める。

 振り払おうにも力が強くてビクともしない。


 ……仕方がない、このまま口論しても時間が無くなる一方だ。

 やれやれとため息を吐きつつ、俺は彼女と腕を組んだまま目的地へと向かうことにした。



「ん? アイツらは……」


 洞窟の中を移動していると、曲がり角の先から聞きなれない声が聞こえてきた。


「ぎゃはははっ! なんだコイツら、モンスターのくせに俺たちにビビってやがるぞ!」

「しかも見たことのない、レアな奴ばっかりだぜ! こりゃ倒せばバズるんじゃね!?」


 陰から覗き見ると、そこには三人組の探索者がいた。

 明らかに柄が悪いし、禁猟区であるはずのフロアで剣やナイフを振り回している。



 モンスターたちも反撃することができず、ただ必死に逃げるしかないようだ。

 中にはすでに傷だらけで、動けなくなっている個体もいた。


 その様子を奴らの内のひとりがカメラで撮影していた。どうやらライブ中継で世界中に配信しているようだ。


 そんなクソみたいな現場を見た俺は、思わず顔をしかめる。



「ねぇマスター。あの人たちって……」

「あぁ。無許可で入ってきやがったな。ここがただの居住区だってことも知らないみたいだ」


 このダンジョンはやや特殊で、モンスターの居場所はフロアで明確に区切られている。


 というのも、モンスターたちの中に自我がある奴とそうじゃない奴がいるからだ。


 隣にいるサキさんもその代表で、彼らはダンジョンのれっきとした住人。だから武器を向けることは断じて許されない行為だった。



「みんなを虐めるなんて許せない……」


 サキさんも、かなり不快な表情を浮かべていた。


 無理もない。

 彼女にとっても彼らは部下であり、同時に家族でもあるのだから。


「おい、そろそろトドメを刺すか?」

「視聴者も良い感じに集まってきたし、やっちゃいますか!」


 その会話を聞いた俺とサキさんは、互いに顔を見合わせると同時に頷いた。



「おい、そこのお前たち!」

「あぁ? 誰だテメェは?」

「このフロアで何をしているんだ?」


 俺がそう問いかけると、三人組の探索者たちはニヤリと笑みを浮かべた。


「なんだよ、お前も探索者か? だったら分かるだろ? レアモンスターを狩ってるんだよ」

「……それは許可のない狩りだ。今すぐ止めろ」


 俺の言葉を聞いて、探索者たちはゲラゲラと笑い始めた。



「あははっ! 誰の許可だって? ここはダンジョンなんだから、探索者である俺たちに権利があるんだよ!」

「このダンジョンは食堂があるんだろ? だったら俺たちがモンスターを狩って、肉を売ってやるよ」

「有効活用してやってるんだ。感謝して欲しいぐらいだぜ」


(なるほど……どうやら彼らはこのダンジョンについて何にも知らないようだ)


 自分たちの行動がどれだけ人として最低なのか、まったく理解していない。


 おそらく他のダンジョンでも、同じようなことを繰り返してきたのだろう。



(しかし……このままじゃマズいな)


 ライブ中継されている以上、このまま放置しておくわけにはいかないだろう。

 こうした馬鹿がまた現れてもらっても困る。



「きゃあっ!?」


 突然サキさんが叫び、俺はハッと我に返る。なんと、探索者の一人が彼女に斬りかかろうとしていたのだ。


「へへっ、美人でもモンスターなら遠慮なくいたぶれるぜ!」


(ちっ、やむを得ないか……)


 サキさんもここが戦闘禁止だというルールに縛られてしまっている。そのルールを破れるのは、ここにはたった一人しかいない。


 俺はスッと右手を突き出し、探索者に告げた。



「このフロアでの武器の使用は禁止だ。今すぐその武器を捨てるんだ」

「あぁ? なんでテメェなんかの命令を聞かなきゃいけねぇんだよ!」

「いいから捨てろ! ダンジョンのルールを守れないなら、管理者として排除するしかない!」


 そう叫ぶと同時に、俺はダンジョンマスターの権限を発動させた。



「な、なんだこりゃあ!?」


 探索者は天井から現れたピンク色の触手に捕らわれ、宙づりとなった。

 手にしていたナイフを床に落とし、他の探索者たちは慌てて後ずさる。


「ひ、ひぃっ!? なんだよこれぇ!」

「おい、早くなんとかしろよ!」

「うっせぇ! 俺だって好きで捕まってんじゃねぇよ!」


 情けない悲鳴を上げる彼らに俺は言い放つ。


「今すぐこのフロアから出ていくんだ。そして二度と立ち入るな!」

「くっ、ふざけんじゃねぇぞ! こんなルールがあるか!」



 どうやら再三の忠告も聞く様子がないので、仕方なく次の手を打つ。


「――エロトラップ、発動」


 その合図と共に、天井や床から赤青黄色と様々な色の触手が現れた。

 そしてあっという間に三人を絡めとっていく。


「服だけを溶かす粘液、感度四千倍、媚薬……さぁ、俺のフルコースを味わってくれ」


 触手で宙づりになった探索者たちはなんとか抜け出そうともがく。

 だが今さら後悔したってもう遅い。


「ぎゃあああぁ!」

「んほぉおおおっ!?!?」

「お゛ぉ゛っ♡ お゛っ♡ んほぉおおぉっ♡♡♡」


 三人の情けない悲鳴と共に、彼らの服が溶け始めた。

 揃ってアヘ顔を晒し、見るも無残な姿へとなっていく。



「い、嫌だっ! もうダンジョンには来ねぇから許してくれ!」

「頼むよぉ……もう二度としませんからぁ……」


 触手に拘束され、身動きが取れなくなった彼らは泣き叫ぶ。そんな彼らに対し、俺は優しく微笑みかけた。


「――だが断る。俺の家族を傷つけた報いを受けるがいい」



 それから数時間後。

 三人組の探索者たちは、衣服を溶かされた状態でダンジョンの外に放り出された。


 もちろん、殺したりはしていない。

 二度と来ないことを約束させてから優しく帰してやっただけだ。


 泣きながら去っていく彼らを見送った俺は、やれやれとため息を吐く。



(まったく……面倒な奴らだった)


 このダンジョンでのルールを破った者には、それなりの罰を与える必要がある。

 だがそれも仕方ないことだと思っていたのだが――。



「あぁ~なんちゅう時間の無駄だよ。もう開店間際じゃねぇか」


 時計を見てみれば、もう食堂を開く時間が迫っていた。


 溜め息を吐きながら頭を掻いていると、隣で震えているサキさんに気が付いた。



「大丈夫か? 怪我はないか?」


 心配して声を掛けると、サキさんは興奮した様子で俺にスマホを見せてきた。


「……ふ、ふふっ。マスターの貴重な映像が撮れました! 見てください、これ!」


 あれ?

 コレってあの三人が持っていたやつなんじゃ。



「え、なにこれ。なんで俺が動画サイトで配信されてるの?」


 PVが公開開始1時間で10万って、なんだこの数字。しかもその数字は今も物凄い勢いで増えていく。


 そういえば調ky……お仕置きに夢中で配信切るの忘れてた?



「ダンジョンに許可なく入ってきた探索者を、マスターが退治する瞬間の映像ですよ!」


 サキさんは鼻息荒く答えると、画面をスワイプして次々と動画を見せつけてくる。

 その中には、触手によってはずかしめを受ける探索者たちの姿もあった。



「お、俺がネットの動画に……どうしてこうなった?」

「ダンジョンのルールを知らしめるために、私が撮影したんですよ! マスターはちゃんと警告したのに、あの人たちときたら……」


 むぅっと頬を膨らませるサキさん。

 そんな姿も可愛いなと思いつつ、俺は頭を抱えた。


(ちょっと何してくれてんのこの人!?)


 俺が警告した映像がネット上に公開され、瞬く間に拡散されてしまったようだ。



「マスターのご活躍が全世界に知れ渡るだなんて、私嬉しいです!」

「そ、そうだな……(いや全然嬉しくねぇー!)」


 というかこれって全世界に向けて配信されてるんだよな? 

 もう消せないだろうし、手遅れじゃねぇか!



「俺は食堂をやってる、ただの店主なのに……」


(このまま放置したら、もっと過激な連中が来るんじゃないか?)


 そんな嫌な予感が頭をよぎる。




 だが予想に反して、その動画を見てダンジョン食堂に興味が湧いたという探索者たちが大勢やってきた。


「良かったですね、マスター!」

「いいからサキさんも手伝ってくれ! このままじゃ俺が過労死する!」


 狭い店内に溢れるほどの客。

 オーダーを取るだけでも一苦労だ。


「はい、お待たせしました! チャーハンと唐揚げ定食ですね!」


 俺の悲鳴を聞き流し、笑顔で捌いていくサキさん。


 こうしてさらなる繁盛を見せるダンジョン食堂の日々は、これからも続いていくのだった。





――――――――――――――――――――


ご覧くださりありがとうございます!

こちらの短編の元となった作品が公開スタートとなりました。


もし本作に少しでも興味が湧いてくださった方は是非、そちらもよろしくお願いします!

(ヒロインもたくさんおります!!)

https://kakuyomu.jp/works/16817330661112520534

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