天国の遊び

雨雲天国

第1話 天使の友人

 「天国は遠いね。君はどう思う?」


 「どうだろう、案外歩いて行ける距離だったりして」

 

 「それはいいね。歩いて行けるんだったらバスとかもほしいな」

少女は少し寂しそうな可愛い笑みで答えた


 「でもやっぱりまだ天国には行きたくないや、」


 「運命には逆らえないよ。」

そう言う少年の瞳は虚空を見つめてた

 「それは君も同じでしょ...ねぇいつか私が天国に行ったら迎えに来て」

少年はその問いに答えることはなかった。


温かい日差しが差し込んでくる美術館、手入れが所々されてるがどこか古臭さと寂しさを感じる。

少し埃が掛かってる名簿を横に受付カウンターの椅子に座ってる少女は楽しそうに花びらをちぎってた。

なにか言うでもなくただ花占いの真似ごとをしてる。

「ねぇ何を占ってるの?」

受け付けの後ろに飾られてる(絵)が話しかけてきた。

その絵は立派だけど少し古びた額縁に飾られてる一枚のどこか儚げな少年の絵画だ。

「虚空くんがいつまで経っても話しかけてくれないから暇だったの」

ふんっと鼻をならしどこか楽しそうな笑みを浮かべていた。

「それならアンジェロが話しかけてよ。いつも僕が話しかけてるじゃないか、たまには君から話しかけてよ」

(絵)は不機嫌そうな声で答えた

「私から話しかけて欲しいの?」

アンジェロは古びたカウンターにくたびれてる花を置いて後ろの(絵)を見つめた。

「君も知ってるだろ今僕の友達は君しかいないだ。それと虚空くんって呼ぶのはやめてくれないか」

アンジェロが不思議そうな顔で聞いた

「虚空と呼ばれるのはなんだか嫌なんだ。頼むから他の呼び名を考えてくれ」

絵の中の少年の顔が少し悲しそうに見えた、そんな筈ないのに。

「ごめんなさい。そんな悲しそうな声しないで、胸がいたんじゃう。」

アンジェロは少し困ったような顔をしながらも微笑んでた

 

「でもそうは言っても他に思い浮かばないわ。」

アンジェロはそう言って絵の下の看板を見た。そこには(虚空の少年)と綺麗な直筆で書かれてた。

アンジェロの姿を見た(絵)は困ったような悲しいような顔した。そんな事あるわけないのに。

「そうだね、こっちこそごめん無理難題言って。僕には名前が無いから、考える方が難しいよね。」

アンジェロは慌てて絵の中の少年と目を合わせた。

「少し時間を頂戴、絶対に考えてみせるわ。」

そう決心したような顔で絵の少年を見つめた。

「っふふ、少しと言わずいくらでも時間はあるからじっくり考えてよ。アンジェロが僕の名付け親になって」

さっきとは打って変わって弾んだ声色になった。

「それは責任重大ね。わかったわ、楽しみに待ってて頂戴必ず貴方にぴったりの名前を考えるわ。」

寂れた美術館の窓から差し込む日差しの位置が変わった頃

ある少年と少女の楽しいそうな笑い声が響いた。


空の色が濃い色なって、美術館の玄関の看板が朝とは逆となった。アンジェロはカウンターに置いたすっかり生気を失ったコスモスを水の入った花瓶に入れて席を立った。

「アンジェロ、どうして一枚しかない死んだ花を生きてる花のように扱うんだ?」

アンジェロはただ何も言わずに絵の少年に向かって微笑んだ。アンジェロの微笑んだ姿はまるで童話に出てくる天使のようだった。

「天使の微笑みとはこの事なんだね。」

(虚空の少年)は静かに呟いた。


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