ホラーのある風景
よういち
指人間
指人間はそこにいる。去年の今頃から変わらずそこに。
最初に見たのは別の場所で、学校近くにある橋の
しかし何日たっても、雨がふろうとも、強風が吹こうとも、相変わらずそれはその場所にいた。にもかかわらず、毎日の登下校で誰もそれに気をとめてはいなかった。
そのころ一緒に学校へ行っていた友達も、それを気にする様子がなかったので、しばらくの間は周りに合わせて、かまわず橋を渡っていた。
そうして指人間を無視していたけど、ある日ついに我慢できずに指人間の横で立ち止まってしまった。
友達が慌てた様子で私の腕を引っ張って、その場から離れようとした。そのとき何かをしきりに叫んでいたけど、その内容は思い出せない。
私が食い入るように指人間を見つめて、その場所から動こうとしなかったため、友達は引っ張っていた腕を離して先に行ってしまい、それ以降は一人で学校に通うことになった。
指人間は、よく見るとその根元が橋の欄干の表面にトリモチのようにべったりとへばりついていたのだった。なんだ、そうだったのか、と疑問が解消された気持ちになった私は、橋の外側を向いていた指人間の顔を覗き込んだ。それは人の顔のようにも、そうでないようにも見えた。ただ、指人間の顔は、引き伸ばされたような形をしていた。少し笑っているようにも見えた。
指人形はそれ以来私の家の玄関の柵にいる。みんながそれを見ないようにしている。
目の前を誰かが通り過ぎていく、一緒に学校に通っていた友達だろうか。
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