第39話 地球2

 

「お待たせしました。海鮮丼になります」

「おぉー!」

「これが海鮮丼か…!」


:美味そう!

:すげぇ!

:いいな〜

:マグロ! イクラ! サーモン!


「もう食べてもいいよね! それじゃあ! いただきまーす!」

「いただきます」


:鮪からいったー!

:そのお味は?

:うお、すげぇいい笑顔

:見てるだけで腹減ってくるわ


「ん〜! おいし〜い!」

「そんなにか。なら私はこの、イクラから食べるか。はむっ……美味いな…! 不思議な食感もすごく良い…! 日本の食べ物は素晴らしいな…!!」


:気に入ってくれたようでなにより

:日本の海鮮おいしいからね

:イルカちゃんの箸が止まらないw

:もうちょっと味わって食べてほしい…


「だ、だっておいしいんだもん! ミコちゃんもそうでしょ?」

「あぁ、美味いからな」

「もぐもぐ……」

「……はむっ」


おいしー!


:無言で食べるの草

:本当に美味しいものを食べている時は口数が減るとか…

:日本の料理はハイドラにも美味しいって思ってもらえてるのか

:すげー!


「サーモン美味しい…!」

「はよえ!」

「飲み込んでからにしろ…」


もぐもぐ…。


「だよね!」

「店主には感謝しないとだな」

「そうだね。ありがと!」

「……!」


:無言のサムズアップかっけぇっす!

:この店主もリスナーなんだよな…

:明らかに名店

:昔ながらの和テイスト


「醤油に付けて……うーん、おいしい!」

「…なるほど、これは…すごい」


:ミコちゃんの語彙力がww

:俺も海鮮丼買ってきたから食べよ

:美味そうに食べるなぁ



「「ごちそうさまでした!」」

「すごいおいしかったねー」

「そうだな。控えめに言って最高だった」


:これ以上ない褒め言葉じゃん

:今夜は海鮮丼食べに行こうかな

:この店明日から大変そうだな

:とんでもない宣伝効果だよなぁイルカちゃん達が来るって


「そういえば、本当にお代はいいのか?」

「ええ、必要ありません」

「すごい太っ腹だ! じゃあ、サインでも書くよ!」

「いいんですか? 是非お願いします」


:イルカちゃんサインなんていつの間に考えてたんだ?

:店主が羨ましすぎる


「サイン…? なんだそれは?」

「あ、そっか。簡単に言うと、有名人が自分の印として書く文字…かな? 大体は自分の名前だと思う」

「なら私も書こう。ある意味で私は有名人だし、なによりここの海鮮丼は美味しかった」

「はい色紙とペン」

「ありがとう」


:プレミア物だ!

:とんでもない価値が付きそう

:地球外生命体のサインとかヤバいやん

:ふたりはどんなサインを書くのか…


「ほいほい、っとね! じゃーん!」

「なるほどな、そういう感じで書けばいいのか。なら…これだな。どうだ?」


:おぉ!

:イルカちゃんのすげぇ!

:Dとpがイルカっぽくなってる!

:ミコちゃんのMは工場の屋根かな?


「そうだ。ちゃんと伝わったみたいだな。受け取ってくれ」

「私も、はいどうぞ!」

「ありがとうございます! 家宝にします!」

「お、大袈裟だよ〜」


:ところがどっこい、それくらいの価値があるんだなぁ

:歴史的瞬間を見た

:これ個人で持ってていいやつ?

:イルカちゃんとミコちゃんがそう言うんだからそれでいいんだよ!

:何百年後とかに歴史的遺産になってそうだな

:国が欲しがりそうなんですが…


「確かに、国から見ても重要になるのか」

「国が相手でも、絶対に渡しませんよ」

「覚悟がすごいなおい…」

「それだけ大切にしてくれるのは嬉しいな♪」


こっそり防災加工と、店主さん以外の手に渡った時ように自動回収の魔術回路仕込んどこ。


:草

:国も手を出せないな!

 


『もしもし先輩! ビッグニュースですよ!』

「ッ…るっさいな、何時だと思ってんだお前は? もう少し声のボリューム下げろ」

『イルカちゃんが明日の配信を地球でやるって今言ってましたぁ!』


……。


「寝ながら電話をするとは器用なもんだな。お休み」

『待ってくださいぃぃ!! 寝言じゃないですぅ! 本当なんですよ! 今動画送ったので、それ見てもらえればわかります!』

「明日の朝でいい?」

『今すぐに見てください!』


…………スマホの電源切るか。


「…よし、お休み」



「おはようございます! いい朝ですね!」

「…………いや、怖ぇよ」


なんでこいつ俺の部屋に勝手に入ってきてんだ。…ちょっと待て。鍵壊れてないよな? どうやって入ってきた?


「ほら、早く着替えてください! 行きますよ!」

「どこに?」

「渋谷です!」

「……一応聞いとくわ。イルカさん絡みか?」

「当たり前じゃないですかぁ!!」


勘弁してくれ……。


「ていうか! 昨日送った動画見てないですよね!」

「そうだが?」

「なんでですか!? まぁ、それはとにかくとして! もうイルカちゃんの配信始まってるんです! 行きますよ!」

「はぁー……とりあえず、着替えるか」


その後は顔洗って朝食をとって…………。


「なんですか?」

「いや、部屋出てけよ。今から着替えるんだけど?」

「はー仕方ないですねぇ…」

「いやお前…はぁ……」



「いやぁー、さっきの海鮮丼はホントに美味しかった──」

「──」


目が合った。俺はそこに妹を見た。いや、ありえない。妹じゃない。だが……。


「どうかしたのかイルカさん?」

「……あ、なんでもない! 次はあっちの方に行ってみよー!」


遠く離れていく。


「先輩? 大丈夫ですか?」

「…さぁな」

「なんですかそれ」

「……帰る」

「え!? 今イルカちゃんいましたよ!?」

「お前と違って、俺はストーカーになるつもりはない」

「私だってストーカーじゃありません!」

「どうだか」

 

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