地震からの始まり
いつものように、電車に揺られながら学校から帰宅する。
その時、カバンに入っていたスマホがブルリと震えた。
一体なんだろうとスマホの画面に視線を落とすと、そこには久々に見掛けた親友の名前が映し出されていた。
レイ「今週末うちでハロパするんだけど、久々に来ない?今新宿に住んでるんだけど」
レイ、という少女は、オレの中学の頃の同級生であり親友の藍原怜。
中学の頃は何かとつるんでいたけれど、高校生になってからレイは東京の高校に進学し、あまり関わる事は無くなった。
久しぶりの連絡に思わず頬が蕩ける。
すぐさま既読をつけたオレは、二つ返事で答えた。
『行く!』
そんなこんなで、あっという間に週末はやってきた。
小さめのバッグにハロパ用のお菓子と仮装用の黒猫のカチューシャと暇つぶし用の小説を入れる。
東京までは電車で約26分かかるので、小説を読むには丁度いい空き時間だ。
最寄り駅につき、新宿行きの電車に乗る。
無事席に座れたオレはほっとしてリュックから小説を取り出した。
その名は“デュラララ‼”。
少し前の小説だ。
もともと、オレはニコニコ動画の声真似から折原臨也というキャラを知った。
そこからアニメにハマり、イッキ見をしてしまった。
(いや、だって思った以上に面白かったからな…)
自分だって、まさかここまでこのアニメにハマるとは思ってもいなかった。
(折原臨也がかっこよすぎてさ……)
そこまで思って、一つだけ訂正したくなった。
かっこいい、というのはあくまで客観視、自分がアニメを見る側だから抱く感想である。
現実にいたら絶対に関わりたくないし、恋人なんざになろうとも思わない。
(遠目から見ているだけで十分だ)
そうしてオレは小説を開く。
オレはアニメを見て話の内容は知っているが、小説を1巻だけ買った。
その理由は、折原臨也の話がアニメと原作では違うから、という一つだけ。
どうやら、マゼンダさんのお話ではなく、自さ……心中オフ会の話らしいのだ。
ネットで調べて軽く内容はわかっているのだが、どうしても原作を読みたくなってしまった。
読むに連れて、やっぱり思う。
(この男、怖い)
心中オフ会にやってきた女性二人がスーツケースに詰められて……結局今回はなんともなかったけれど。
それにしても。
("死ぬってのは―――無くなるって事さ。消えるのは苦しみじゃない、存在だ"か…)
たまに名言残すよな、この人。
その時、突然車両が不自然に揺れると同時に、キィィィィィィィィィッッ!と、耳障りな音が車内に響いた。
『っ!?』
座席から立ち上がり、あたりを見回すと、他の乗客たちも同じように辺りをキョロキョロと見回していた。
そして突然車内に不安になるアラームが鳴り響いた。
【チャランチャラン、チャランチャラン。緊急地震速報。緊急地震速報】
乗客のスマホから一斉に、同じような言葉が繰り返される。
〘地震……!?〙
自分も急いでスマホの画面を見ると、そこに“震度6強”という文字が見えた。
〘嘘だろ……!?〙
先程から耳をつんざくようなキィィィィィィ!!!!という音が続いていたが、その音が一瞬止む。
安堵したのは一瞬だった。
代わりにガガガガガガッッッ!!!!という音がなると同時に、車体が傾く。
乗客「ひぃっ、脱線だァッ!!!!!!」
パニックになった乗客がそう叫んだ事で今の状況をようやく理解できた。
――理解できた所で、人間が天災に抗える訳も無いだが。
席から立ってしまった事が仇となった。
傾く車体につられ、バランスを倒しドアにぶつかる。
ガンッ、と強い衝撃が頭に与えられた。
『ぅ……』
痛い……。
オレ、このまま死ぬのか…他人事のように思いながら意識を絶った。
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