第249話 偽りの恋
「はっ? 何言ってんだよ……」と予想外の答えにただただ仰天する城崎。
「真面目に考えたの。私は真にとって何なんだろうって。私は真のことが本当に好きであなたのためなら何だってやることが出来た。だって好きな人のために頑張るのって自然だし、とても素敵なことだから。
だから日向のお母さんの殺害に加担したし、殺したと嘘を吐いて助けようとした。勿論死ぬのが怖かったけど、それで真が私に振り向いてくれるなら構わないって思ってた。でも、私が危なくなった時は一回も助けてくれなかったよね。コンビニで強盗に襲われた時もいなかったし、橋の上から落ちてしまったときも……」
「違う、あの時はすぐにお前を助けようとして……」
「さっきだって、日向が私か真のお母さんのどっちを殺すかってなった時、私のことを嬉しそうに睨んできたもんね。その時に思ったの。あっ、この前と一緒じゃんって。私が死ねば全て丸く収まるんだなって。
そりゃそうだよね。私なんかより血の繋がってる肉親の方が大事に決まってるもんね。真にとって私の存在なんて所詮そんなもんだったんでしょ」
「違う、俺はお前の事も大事だと思ってる! 言っただろ、お前のことを守ってやるって。実際に俺がお前の彼氏になったことで一軍に名を連ねて誰にもいじめられず、お前の家庭の事情も明るみに出ることなく平穏な学校生活を送れただろ。そんなことも忘れたのか!」
「いざって時に捨てられる大事な駒でしょ? だからこんなに努力しても全然見てもらえないし、こんなことしたら振り向いてくれると勝手に勘違いして、無駄に頑張ってる私を見てずっと心の中で嗤って優越感に浸ってたんでしょ。
ううん、初めから私の事なんて彼女どころか人として見てすらいなかった。結局私は、真にとって都合の良い便利な道具に過ぎなかったんだなって。実際関わってみるとろくなこと無いし……そう考えたときに、好きになった理由も分からなくなって、なんだか色々馬鹿らしくなって……
公園でデートしようと提案した時だって、うちらが初めて会ったあの公園で思い出に浸ってただ楽しく過ごせると思ってたの。それさえ実現できればあとは何でもよかった。なのに真は、『そんなの五分で飽きるわ』ってどうでもよさそうに突っぱねてたもんね」
「何言ってんだよ……公園って何だよ。俺たちが初めて会ったのは学校の屋上だろうが!」
「ああ……やっぱり、あたしを助けてくれたことなんて覚えてないんだ。嘘だったんだね……だから決めたの。真に忖度せず、自分の気持ちにちゃんと向き合おうって」と、今まで溜め込んできた城崎に対する鬱憤を残さず全部吐き出した。
「さっきから何口走ってんのか全然わかんねえよ。何が言いたいんだ!」
「私はもう、真のことが大事だと思えなくなっちゃった……だからあなたの為に死ねない」と地面に横になっている城崎の目を真っすぐ見ながら、口を震わせて恐怖を押し殺しながら勇気を振り絞って言い切った。
「それが君の答えなんだね」と雅人が確認のために訊くと、茜がゆっくりと頷いた。
「馬鹿野郎ぉ! 俺のことが大事だと思ってんだろう! あれは嘘だったのかぁ!」
「思ってたよ。でもよくよく考えてみれば、真みたいな矮小で、独り善がりで、自己顕示欲に溺れた人のために、自分の命を捨てられる訳無いなって。多分誰だってそう思うんじゃないかな。
だから、ごめんね。真の期待を裏切ってしまって。本当に、ごめんなさい……」と臆さず冷静に述べた後、気まずそうにお辞儀をしてそのまま項垂れた。
まさか洸太の言葉で目が覚めるなんて思ってもみなかった。顔を上げたときに見る城崎の顔が恐ろしくてたまらない。
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