穢れの天使

@kubiwaneko

第1話

『――下に見えるのが、昔に私達人間が住んでいた地球です』


女声の機械音声が頭に響く。

少し薄暗く、黒くなった地球が目下に見える。

ガラスを通して、浅緑色の双眸で地球を見つめる少年が1人佇んでいた。

身長は130ほどで、髪色は白橡色。髪は少し長く、後ろで三つ編みにしている少年である。

そして、その少年がガラスに手を付き、時間を忘れて地球を眺めていると――、


「アバン、もう行くよ」

「あ、リヴァ」


少年――アバンは自分に声をかけてきたリヴァに小さく返事をした。


「アバン、ついておいで」


落ち着いた声で、リヴァはアバンの前に立ち、会議室へ先導した。

――別に会議室くらいわかるのだが、まだ子供だと思われているのだろうか。


「――とうとうこの日だ。天使たちで、地球に行く」


リヴァが腰まで伸びる紺青色の髪を揺らして周りの人たちに目線を巡らす。アバンも、リヴァの露草色の目と自分の目が合った。

アバンは決意を固めた表情で言葉を続ける。


「『ケガレ』のせいで、人類は地球から撤退した。だけど、僕たち『天使』が清浄すればまた地球に住めるようになるんだ」


リヴァは、『天使』の中で最年長の14歳の人物だ。

面倒見がよく、周りから兄のように慕われている。

今から、アバン達は『ケガレ』に侵食された地球に向かうのだ。


         1


――2XXX年、現代よりも科学が発達した時代の日本に、突然異形の化け物が現れた。


『ケガレ』と呼ばれるそれは人間を襲い、その体から放たれる瘴気は建物を腐食させ、大地を不毛にする。

駆除しようにもケガレは頑丈でなかなか殺せず、最初は数が少なかったはずなのに、気付けば日本のみならず、世界中に増殖していった。

追い詰められた人類は、地球を捨て、宇宙基地に逃げることにした。

だが、宇宙は広大だ。どうしても人類は地球に戻りたくなってしまう。

宇宙基地に移住した人類は「地球に戻りたい」という願いを抱き、ケガレを殺す方法を模索した。

そして――数十年後に完成したそれは『清浄の天使』と呼ばれる人の形をした生物兵器だった。

人間が居なくなった地球はケガレが溢れ、瘴気に汚染されきっている。

そんな環境に人間が居ると、徐々に体が瘴気に蝕まれ、ケガレへと変質してしまう。

――だが清浄の天使は長時間瘴気まみれの環境に居ても、ケガレに成ることはない。


また、清浄の天使は『魔法』と呼ばれる特殊な力を使うことができ、銃火器などの攻撃を物ともしないケガレを殺せるのだ。

だから、ケガレにまみれた地球に清浄するため、今からアバン達は地球に送り出されるのである。


探索船が人類の住む『宇宙基地』から出発する。

宇宙基地が段々と遠ざかり、みるみる内にガラス越しに見ていた地球が接近してくる。

大気圏で探索船の表面が燃焼し、だが中に影響はなく安全に探索船が地球に着地する。

雲が立ち込めており、晴れた天気は見ることができない。――それが今の地球なのだ。


「――やるか」


そんなリヴァの言葉が、妙にアバンの耳に残っていた。



         ■■■


『宇宙基地』


現在の人類の本拠地。ここ以外に人はいない。

元々は小さかったが、『ケガレ』から避難してくる人間を迎え入れるために拡張を繰り返し、今では北海道程の規模に。

中心部に行けば行くほど治安は良くなる。

宇宙基地の周りには隕石感知機械が多数という言葉では表せないほど設置してあるため、隕石やなにか物体が衝突してくる心配はない。

無論人間は地球から宇宙基地までロケットで来たわけだが、その宇宙基地の開発からロケットの制作まで、ある一つの研究施設が行っている。

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