生き延びた屑

悠井すみれ

第1話

 うたた寝から目覚めると、目の前にヨハンの顔が迫っていた。目蓋を閉じるといっそう際立つ整った顔。唇が軽く尖らせられて。キスされそうだ、と気付いた瞬間に肌が粟立つ。その空気の流れを感じたのか、ヨハンが目を開けた。


「あ、ヴィム。起きちゃった……?」


 視界いっぱいに映る、奴の顔。笑んで軽く細まったハシバミの目、頬を染めて、誤魔化すような照れ隠しのような──そんな表情が腹が立って気持ち悪くてしかたなかったから、思い切り殴り飛ばしてやった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る