1-5

 月曜日になった。今日からまた登校である。寮からこうやってみんなで登校するのは、なんだかんだ今日が初めてで、クラスメイトたちとぞろぞろと揃って登校するというのは、それはなんか新鮮さすら感じる。そのうちに時間が経ったら、これが当たり前に、普通になって行くのだろうか。普通の学校生活を送れるのだろうか。俺が、普通に。



「どうしたの、久くん」


「いや、なんでもない。なんでもないよ」



 法令上は、一度高等学校を卒業した者の再入学を禁止する規定はないらしく、一度高等学校を卒業したことをもって、高等学校入学資格が無くなるものでもないらしい。しかし、ここは全日制の高校ではない。青空碧天高校だ。通信制とか、定時制とかってことになるのかな。それでも、たとえそうだとしても、やり直すというのは、やはりなんというか、不安が大きい。法律上許されていても、一度は通った道だ。恥ずかしいというか、なにをしているんだという気持ちになる。俺は高等専門学校だったから、普通の高校は、自称普通の高校は、初めてだ。しかも複式学級。変則的ではあるが、しかし普通の授業ではあった。そこは安心しても良いのかもしれない。 



 職員がほとんどいないのは、それも理由があるのだろうか。学園長とか、いないのかな。まあ、普通を謳う高校なんて、そんなの普通じゃないもんな。



 しばらくして学校が見えてきた。真新しい、白い校舎。俺の新しい、普通に過ごすための、普通の高校の、普通の学校生活。北の大地の海の見える田舎町。灯台がある小さな町。ここで、それが始まる。



 夏の影が出来ていた。朝から照りつける強い日差しは、僕らを照らして影を作る。影は存在証明となる。僕等がここにいるという、ここに存在しているという証明に。当たり前に、当然のように、普通にそれを証明する。



 普通の生活が、今日という一日が始まる。



 

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