第58話 ヤキモチ焼くなよ、ティンカーベル

 どうもピーターは、この妖精には、頭が上がらないらしい。

「知らないわよ、よその子なんて!

 ピーターなんて、私には関係ないもの!」

プリプリしながら、そうまくしたてると…

凄まじい勢いで、金色の粉を振りまきながら、グルグルとアキの周りを

回っている。

ティンクが飛ぶたびに、アキは何だか鼻がムズムズとして、くしゃみが

立て続けに出る。

だがピーターは、大きく足を開いて立ちすくむと、

「もしかして…あれじゃないか?

 塔の主が、目をつけた子供をさらっている、というヤツか?」

ティンクに向かって、そう言い訳をする。


「え~っ?」

 それって、ホント?

 じゃあ、ケイタは本当にさらわれたの?

アキがショックを受けていると…

「じゃあ、他にも、さらわれた子供がいるっていうことなんですか?」

いつもは冷静なショータが、ピーターに詰め寄る。

「あれ?キミたち…知らなかったのか?」

ピーターは、大げさに肩をすくめる。

「だって…だって、ケイタは、自分からユニコーンに乗ったんだよ?」

確かにその姿は、アキたち四人は目撃している。

「でも…現実に、いなくなったんだろ?」

ピーターがズバリと言う。

そう言われてしまうと、確かにそうかもしれない…と、アキはうなだれる。

「ちょっと、待って!

 まだ、そうと決まったわけではないんでしょ?」

すっかり落ち込むアキを見て、カガリは励ますようにそう言う。

「うん!」

「たしかに、そうだ」

「まだ、あきらめるのは早い」

かわるがわる、ショータとユウジが、アキの傍らで慰める。

「ホント?」

いつもは、強気なアキも…ケイタに対しては、甘いのだ。

アキはどうしても…ケイタがさらわれたことを、信じられないのだった。

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