学校内警護官の苦悩

黒川宮音

第一話 「配属前夜」 「配属当日」

わたし名前なまえ青葉あおば・フォン・エステシャン


このたびアメリカのSS(シークレットサービス)から日本にほんのSPに転職てんしょくしました。


転職てんしょく.......というより引き抜きですね。


シークレットサービスに日本の警視庁けいしちょうからオファーがありまして、日本で警護官けいごかんをしてほしいとのことで日本に帰ってきました。


具体的ぐたいてきはなしはこれからするとのことだったので非常ひじょうに興味深い《きょうみぶかい》です。


「青葉くんかね?」


「警視総監さんもお元気そうで何よりですわ」


そうして私は警視総監けいしそうかん執務室しつむしつへと入った。


内容としては私をSS(シークレットサービス)から引き抜いた理由とその役割やくわりについて具体的なことをお話してくれるとのことらしいです。


単刀直入たんとうちょくにゅうに話すが、君の力を貸してもらいたいんだ.......」


警視総監の顔は緊張からか汗が滴れていた。


「具体的には.......」


警視総監はそう言うと今の日本で起こっている治安異常について話してくれた。


「なるほど....つまり学校に入ってくる脅威きょうい排除はいじょしてほしいと?」

「そうだ....将来の子どもたちが悪影響を受けてしまうからな...」


日本が崩壊しなかった原因。


それは少なからず日本の警察機関けいさつきかんにあるだろう。


治安の悪化により日本は大きな打撃を受けたにも関わらずだ。


今の今まで日本は世界一平和な国としてその名前をトップにし続けていた。


日本の警察の優秀さ故に有能な人材は手に余るほどほしいと言ったところなのだろう。


警視総監の話は都内の政令指定高校の一つ渋谷四天王寺高校しぶやしてんのうじこうこうに配属だということと、あらゆる脅威から生徒を守るため銃火器じゅうかきの使用が認められていることだった。


脅威から守るのはもとよりアメリカの銃社会で要人警護をしてきた私は銃の扱い方や現場認識能力げんばにんしきのうりょくに長けている。


日本での初仕事がうまくいくように頑張ろうと思う。





2047年 4月2日 


Am 8:20. 警視庁。


私は配属の準備のため一度警視庁へ寄る必要があった。


警視庁に入った途端一人の警察官に止められた。


「こら!悪戯いたずらに入ってくる場所じゃないよ!」

「お嬢さんが来るような場所じゃないから出ていきなさい」


お嬢さん?


そう言った警察官に警察手帳けいさつてちょうを見せた。


「警視正:青葉・フォン・エステシャン........!?」


そう口に出すとみるみる顔が青ざめていってすんなり通してくれた。


警備部けいびぶの備品庫は5階にある。


装備一式を取りに来たからである。


銃は愛用のH&K usp(多数の軍、警察で使われているハンドガン)を使うが、警棒や無線、手錠などは備品庫へ取りに行く必要があった。



40分後。


私は公用車を使い渋谷四天王寺高校しぶやしてんのうじこうこうへと出発した。


高校まで行く間に私は高校のファイルに目を通した。


渋谷四天王寺高校。


政令指定高校の一つであり100年の歴史をもつ伝統校である。


生徒名簿の方にも目を通したが特に気になることはなかった。


この高校で私は表向きは非常勤教諭として学校内の警備を行う。


普段の要人警護とは違って警護対象が複数いるのがまた大変である。


一人ひとりに気を配っていないといけないので神経を深く使うのだ。


そんなことを思っていると車は高校の裏門に止まった。


車を見送ったあと私は校長先生に挨拶をしに行った。


「よくぞ来てくださいました!」

「どうぞお座りください」


私は会釈えしゃくをしてソファーに腰掛けた。


「学校内警護と伺っているのですが、制圧対象せいあつたいしょうは不審者のみで構いませんか?」


そう尋ねると校長先生は軽く笑いあなたのお手を和ずらせるわけにもいきませんからと言い、このあとの打ち合わせについて話を始めた。


「なるほど、非常勤教諭ですか......」

「できれば授業も教えてもらえないでしょうか?」


校長先生はそんなことを言ってきた。


確かに私は教員免許を持ってはいるが........


「教えると言っても何を教えたら....」


そう言うと校長先生は目を輝かせながらこっちに寄ってきた。


「あるじゃないですか!」


「身を守る術ですよ!」


無茶苦茶だ。


「丁重にお断りします。」


ですよね〜という顔をしながら校長先生は笑った。


「では、教室に挨拶に行きましょうか。先生たちへの紹介はその後で」


「あ。はい」


そうして私は各クラスを回ることとなった。




             次話:教室巡りと自己紹介












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