ダグル迷宮地下第十一階層……今いる場所

 何処までも続く白い通路をエルは警戒しながら先へ先へと進んでいる。


(ホントに何もないな)

 “儂も、この通路は知らない。だが、なんとなく分かる”

(分かっても教えないんだよな?)


 グリモエステルスに問いかけながらエルは周囲を見渡した。


 “そうだな。自分で考え学んだ方がいい。先々のためにもね。ただアドバイスが必要な時は手助けする”

(ああ、分かってる。それにしても……真っ白で目がおかしくなる)

 “視覚がおかしくなる。なんでこんな造りにしたか分かるかい?”


 なぜなのかと思いエルは首を傾げ考える。


(視覚作用……侵入者よけか?)

 “そういう事だ。じゃあ、もう一つ質問するよ。なぜこの通路には扉がない?”

(そういえば……でもなぜなんだ?)


 なぜ扉がないのか疑問に思い悩んだ。


 “儂は教えないよ。よく考えれば、すぐに分かることだからね”

(うん……よく考えてみる。そうだなぁ…………侵入者避けと関係あるのか? そうだとしたら、この先は宝物庫か何かかもしれない)

 “流石だよ。その通り、この先には宝物庫がある”


 エルは立ちどまり遥か先を見据えた。遥か先にあるのか宝物庫はみえない。


(グリモエステルス……その宝物庫に居るってことなのか?)

 “それはどうかな”

(もしここが宝物庫だけに繋がってるなら引き返すことになる)


 迷い後ろを振り返る。


 “どうするんだい? 居る方にかけて宝物庫に向かう。それとも引き返して他を探すか”

(できるなら……そんなに時間をかけたくない。でも、もし宝物庫にいた場合……またここを通らないとならないよな)

 “そうなるね”


 エルは深呼吸したあと宝物庫があるだろう方向を向き歩きだした。


(もう迷わない……この先に進む。もし居ない時は引き返せばいいからな)

 “それでいい。ここまで来て引き返したら却って無駄になるからね”


 コクッと頷きエルは歩きながら先を見据える。


 ∞✦∞✦∞✦∞


(ここは何処なの?)


 シルフィアは薄目を開け今の状況を把握しようとしていた。

 そうセルギガ達が近くにいるかもしれないと思ったからである。


(動けない……縛られてるのね。何処からか、セルギガの声が聞こえるわ……近くにいる)


 意識を集中してグリモエステルスへと呼びかけた。


(聞こえる? 聞こえてたらエルに繋いで)

 “シルフィア……待ってて今つなぐ”


 グリモエステルスに言われシルフィアは待機する。


(シルフィア、大丈夫なのか?)

(私は拘束されているだけだから問題ないけど、ログスとララファがどうなったのか分からないの)

(そうか……今いる所は分かるのか?)


 薄眼でみえる範囲へ視線を向けた。


(壁が白いわ。それ以外なにも分からない……待って、金の匂いがする)

(金の匂いって……そんな物まで分かるのか?)

(ううん、少量じゃ分からない)


 クンクン嗅ぎながら他に匂わないか探る。


(じゃあ、そこには沢山……金があるってことか)

(そうなるわ……でも、なんでこんなにあるのかしら?)

(多分シルフィアが居る場所は宝物庫だ)


 なるほどとシルフィアは納得した。


(丁度そっちに向かってる)

(分かったわ。何かあったら、また連絡するわね)


 その後、交信を切る。

 そしてシルフィアはそのまま待機していたのだった。

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