ダグル迷宮地下第十一階層……信用と記憶

「いい加減にしろっ!? お前たちは黙って俺の言う事を聞いていればいい」


 そう言いセルギガは目の前の六人を鋭い眼光で睨んだ。


「聞けることと、そうじゃないことがある」

「ガーガスト……俺に逆らうってことが、どういう事か分かってんだろうな」

「おい、セルギガ……ガーガストだけじゃないんだが」


 そう言いザグルべが目を細めセルギガを見据える。


「おいおい、オレもその一人だ!」


 そう言いイエローベージュの髪の男は、ジト目でセルギガをみた。


「ダイゲン……クソッ、お前までもか!」

「こうしたらいいんじゃないか……セルギガ一人で、そのエルに勝てるなら認めるってな」

「それはいい考えだ。オルグスの言う通り、そのガキに勝てるようなら……お前をリーダーって認める」


 ガーガストはそう言うとセルギガ以外の者たちへ視線を向ける。

 それを聞いていた者たちは、その意見に賛同した。


「フンッ、まあいい……俺が勝てばいいんだよな。そんなの簡単だ! もし俺が勝利したら、なんでも言う事を聞いてもらう」


 そう言いセルギガは睨みを効かせ六人を順にみる。

 だが六人は、それに動じず馬鹿にしたようにセルギガを見据えた。


 ∞✦∞✦∞✦∞


 一方エルは通路を歩きながら各部屋を確認している。


(なんでこんなに部屋がある? まるで、ここに文明があったみたいだ)

 “あったみたいじゃない。実際に、このダンジョンには文明が存在した。エル……ここまで降りて来て何か感じなかったかい?”

(んー……そういえば試練をする所にしては、まるで侵入者を追い払う……いや撃退するような罠が多かった気がする)


 そう言いながらエルは部屋の中に入った。


 “その通りだよ。ここに居た者たちは外からの干渉を拒んでいた。まあ何千年も前のことだけどね”

(グリモエステルス、なんかみて来たような口ぶりだな)

 “そうだね。ここにくるまで忘れていた。なんで覚えていなかったのかは不明だけどな”


 それを聞きエルは不思議に思い首を傾げる。


(もしかして……グリモエステルスは、ここに存在した古代文明から生まれたのか?)

 “儂だけじゃない。オーパーツと云われる物の全てが、このダグル迷宮に存在した各文明から生まれた”

(各文明って! 他にも存在したのか?)


 エルは驚きその場に静止し一点をみつめた。


 “そうだね。儂は、この階に来たことがある。だけど別の階層の文明につくられた。ただ、どこの階層か思い出せないけどね”

(なるほど……だけど、オーパーツは王を決めるための物って言ったよな?)


 そう言い再び部屋の中を歩きだす。


 “勿論そうだよ。このダグル迷宮に存在した文明は各階層ごとに争っていたんだ。そのため治安を良くするためにオーパーツをつくったのさ”

(それって、おかしくないか? 却って争いが起こるんじゃ)

 “それは一時的にだろ。王が決まれば争いが治まる”


 それを聞きエルは、なるほどと納得する。


(でもなんで……ここの文明は廃れたんだ?)

 “廃れたか……それは違うよ。とある王となった者が、ここから外へみんなを解き放ったんだ。まあ……病気や色々なことも重なったみたいだけどね”

(……その言い方だと知らないのか?)


 そう言いエルは首を傾げた。


 “ああ……ずっと眠っていたせいか。ここから外に出た時の記憶が曖昧なんだよ。いつの間にか人間嫌いになっていたしね”

(……色々あったんだな)

 “まあ、言いたくないこともあるんだけどな”


 そう言われエルは、これ以上この話をしない方がいいと思い話題を変える。

 そしてエルは更に部屋の中を探り歩いたのだった。

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