お互いの事情と提案

 ラクドサスは語っていた。自分のことについて……。


「……シルベリアスグ国の王子? ラクドサスが……。それも本当の名前が、ラクド・S・サリウス」


 ――本当はラクドなのだが、しばらくはラクドサスで話を進めます――


「エル、そうなる。俺は、跡目相続争いに巻き込まれた」

「んー……それで逃げてるのか。でもなんで逃げる必要があるんだ?」


 そう言いエルは首を傾げる。


「俺は第一王子じゃなく第二王子だ。だが父上は生前にオーパーツを俺に託した」

「そういう事か。そのため逃げてる……でも、なんで戦わないんだ?」

「兄上の方には、他のオーパーツ所持者がついてる……それも三人もな」


 ラクドサスはそう言うと、クッと下唇を噛んだ。


「それって……下手したら乗っ取られるんじゃ? それに三人も……」

「ああ、だから心配なんだ。だが、今の俺の力……いや眷属も少ない。こんな状態じゃ、兄上を助けることもできん」

「そうか……それでここで仲間を探していた、ってことだな」


 そうエルが聞くとラクドサスは、コクッと頷いた。


「本当は……俺を素手で倒したお前を眷属にと思ってたんだが、同じオーパーツ所持者じゃな」


 そう言いラクドサスは、ガッカリしている。


「なんか悪いな。だが俺も、やらなきゃならないことがある」

「さっきの件と関係することか」

「ああ……そうだな。俺は……」


 エルは理由を話し始めた。


「……復讐か」

「ラクドサス、さっき確証を得た。それまでは、ずっと迷っていたんだ。でも……」

「でも、なんでエルの母親を殺し村までも」


 ラクドサスは不思議に思いそう問いかける。


「アイツ……セルギガが持っているオーパーツは昔、父さんの物だった。それを俺が十八になるまでって母さんに託してたらしい」

「それでか。もしかしてセルギガは、そのオーパーツの眷属だったのか?」

「そうらしい。そのことは、シルフィアがよく知ってる」


 それを聞きラクドサスはシルフィアを見据えた。


「もしかしてシルフィアは……」

「ええ、元はセルギガが持っているオーパーツの眷属だったわ。でも……あくまでも、エルの父親であるエルムスのね」

「ちょっと待て……それって、英雄と云われたエルムス・ラルギエ。……ん? そういえば」


 ラクドサスは信じられないと思い、疑いの眼差しをエルに向ける。


「なんだよ、その疑いの目は?」

「いや、悪い。だがそうか……かつての英雄は、既に亡くなっていた。一度、会ってみたいと思っていたが……よく父上から聞かされていたからな」

「そうか。俺は、父さんが昔何をしていたのか知らない」


 そう言いエルは俯いた。


「恐らく……お前が十八になったら、全て話すつもりだったのだろうな」

「多分そうなんだと思う。だけど、それも今じゃ知ることはできない」

「お前も大変だな……俺だけがって思っていた」


 ラクドサスはそう言い遠くをみつめる。


「それを云うなら俺もだ。自分だけがなんでって思ってたからな」

「なあ、俺と共闘を組まないか?」

「ラクドサス……何を考えてる?」


 エルはラクドサスに疑いの眼差しを向けた。そう、何かを企んでいるんじゃないのかと思ったからである。


「ああ……企んではいる。俺だけじゃなく、お前にもいいことだぞ」

「俺にもいいこと?」


 エルはどういうことだと思い考えた。


「簡単なことだ。お前たちを俺たちが助ける」

「ってことは、その代わりラクドサスたちを助けろ……ってことか」

「そうだ……悪い話じゃないと思うが」


 そう言いラクドサスは、エルを見据える。


「そうだなぁ……だが、連絡手段はどうする?」

「確かに必要だ。さて、どうする……お互いオーパーツに聞いてみるか?」


 それを聞きエルは頷く。

 そしてその後エルとラクドサスは、お互いのオーパーツに助言をもらっていたのだった。

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