ダグル迷宮地下二階層……眷属の儀式と再び罰を受ける

 エルとシルフィアは、向かい合い儀式を始める。

 魔導書が二人の間で閉じたまま浮いていた。

 二人は大きくなっている魔導書の上に左手を添える。


 《 《星の理を知る魔導書 古の習わしにより 眷属の儀式を行う 我が呼びかけに応じよ グリモエステルス!!》 》


 そう二人が言い放つと魔導書は、黒っぽい赤紫に発光した。

 それを確認すると二人は、用意していたナイフで左の親指を軽く斬る。その後、親指から流れ出る血を二人は同時に魔導書の中央に垂らした。

 すると魔導書は激しく光を放ち、赤紫の魔法陣が展開される。

 そこから二個のグラスが浮き上がってきた。そのグラスには、赤い液体が入っている。

 それを確認すると二人は、各々のグラスを持った。

 躊躇いもなくエルは、そのグラスを口に運び飲んだ。

 シルフィアは、一息吐いたあとグラスの液体を飲む。

 すると二人の全身が黒っぽい赤紫に発光する。その後、光が消えた。

 そしてシルフィアの胸元には、エルと同じ赤紫色の本と火の鳥のような紋章が浮かび上がる。

 それを確認したように魔導書は、手に収まるぐらいのサイズになった。


「これで、いい。あとは、この扉の罠を解除するだけだ」

「うん、それはいいけど。エル、能力解かないの?」


 そう言われエルは首を傾げる。


「なんで、そんなことをする必要がある。それに罠を解いても、この扉の先が安全とは限らない」

「……そうだね。確かに、その方がいいかも」

「ああ……じゃあ、罠を解く」


 そう言い手に持っている魔導書を目の前に翳した。すると発光しながら魔導書が通常の大きさになる。因みに今更だが通常の大きさとは、儀式を行った時の大きさより小さめ……中くらいである。

 それを確認するとエルは、魔導書に左手を翳し右手を扉に向ける。


 《我が目の前にある扉にかけられし罠を解く方法を教えられたし グリモエステルス!!》


 そう言い放つと魔導書が発光して、パラパラとページが捲れた。その後、書き記している場所でとまる。


「……目づらしい……教えてくれるなんてな」


 その一言により魔導書が一瞬で黒く染まった。

 それをみたエルは、まずいと思うも体を固定され動けなくなる。その後、魔導書から木の棒が出て来てエルの頭を叩いた。

 エルはそのまま、バタンと地面に倒れる。


「エル!?」


 そう言うもシルフィアは動けなくなった。


 ”黙ってみていろ”


 その声を聞きシルフィアは、唾を飲み込み心の中で頷く。

 閉じたまま魔導書は、倒れているエルの前の地面までくる。

 それに気づいたエルは、キッと魔導書を睨んだ。その後、魔導書に自分の血を垂らした。

 すると魔導書が光って黒から元の色に戻る。そして宙に浮き、また元のページが開いた。

 エルは頭を摩りながら立ち上がる。そして口の中に溜まった血を、ペッと吐き出した。エルの頭からは、血が流れ出ている。


「クソッ、下手なこと言えない」


 そう言いながらエルは、何もなかったように魔導書をみた。


「エル、大丈夫なの?」

「ああ……痛いが、問題ない。それより、早くやるぞ」

「うん、それならいいけど……分かったの?」


 そう聞かれエルは頷く。

 エルは罠を解く方法をシルフィアに教える。

 そしてその後、エルは扉を見据えた。

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