ダグル迷宮地下二階層……豹変に戸惑う

 あれからエルは、グリモエステルスに儀式の仕方を聞いた。

 その後、シルフィアが目覚める。

 エルはシルフィアに儀式の方法を説明した。


「シルフィア、儀式の仕方は……今話した通りだ」

「うん、だいたい他のオーパーツと同じだね」

「そうなんだな……そうか、それで俺は今から能力を解放する。そうしないと真面に儀式ができないと思うんだ」


 それを聞きシルフィアは不思議に思い首を傾げる。


「それって、どういう事?」

「……言えない。だけど能力を解放すれば、その意味が分かる」

「分かったわ……今は聞かない」


 そう言いシルフィアは、真剣な顔でエルをみつめた。

 それを確認するとエルは、グリモエステルス……魔導書の上に左手を翳し詠唱し始める。


 《古より存在し力 我が体内に封印されしもの この場にて解き放たれろ! グリモエステルス!!》


 そう言い放った。

 シルフィアはその様子を、ゴクリと唾を飲み込みみている。

 その後エルの左手と魔導書の間に、魔法陣が発光しながら浮かび上がってきた。その魔法陣が展開し終えるとエルの頭上に移動する。と同時に、スッと足元まで降下した。


 するとエルの全身は、黒っぽい赤紫色に発光する。そして、体全体から漆黒のオーラが放たれた。


「うわぁぁああああー!!」


 そう叫びエルは、頭を抱え蹲る。……だが前ほど酷くはないようだ。

 すると左肩の紋章が発光しエルの表情が一変して、優しい顔からキツい顔へと変わる。そして左側の額には、赤紫色の炎の紋章らしきものが浮かび上がった。

 その後エルは目を見開くと、赤紫に発光し魔法陣が両眼に浮かび上がる。

 スッと何もなかったようにエルは立ち上がった。そしてシルフィアの方を向きみる。

 シルフィアはエルの雰囲気が変わり驚いた。


「え、エル……だよね?」

「ああ、そうだ」

「……あーえっと、一瞬だけ別人にみえたから」


 それを聞きエルは、目を逸らし溜息をつく。


「さっさと、終わらすぞ。いつまでも、ここに居る訳にはいかないからな」

「あ、うん……そうだね」


 そう言うもシルフィアはエルの豹変ぶりに戸惑っている。


(これが、本当にエルなの? エルムスは能力を使っても、いつもと変わらなかった。オーパーツのせい?)

 “……それはないよ。んー本来まだ眷属じゃない者には、こうやって話しかけない。だけど、君が戸惑ってるようだからね”

(それって、どういう事なの? グリモエステルスのせいじゃないなら……)


 シルフィアは不思議に思いそう問いかけた。


 ”確かに儂の力も関与している……だが、それは一部だけだ”

(一部だけって……意味が分からない)

 ”儂の能力で、全てではないが理性を取り除いているんだよ”


 それを聞きシルフィアは更に困惑する。


(なんでそんなことをする必要があるの?)


 そう聞かれグリモエステルスはシルフィアにその理由を話した。

 その間エルは、なんで黙ったのかと思いイライラしている。


「何をしてるんだ? さっさとしないと日が暮れるぞ」


 その声を聞きシルフィアは、エルへと視線を向ける。


「あ、ごめん……そうだね。始めようか……」


 そう言いシルフィアは、真剣な顔で頷いた。

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