ダグル迷宮地下二階層……対話と眷属とは?

 ここはグリモエステルスが創った意識空間。周囲には、以前のように本が置かれていない。そう、なぜか白と紫の霧で覆われている。

 シルフィアの意識は、ここに飛ばされて来ていた。


「ここって……?」


 そう思いシルフィアは、辺りを見回す。


 “ここは、儂が創り出した空間だよ。君が、シルフィアだね”

「ええ、そうだけど……話ってなんですか?」

 “……やはりそうか。シルフィア、君は慣れているね。こういう事に……”


 そう言われシルフィアは、何も言えなくなる。


 “だんまりかい。まぁ隠そうが、儂には分かっているがね”

「私の心を読んだって訳かぁ。それじゃ隠せないわね……って、そもそも思ってないけど」

 “そのようだね。でも、なぜ魔剣バスターへルギアの所持者である者の眷属が一人で行動している?”


 そう問われシルフィアは、ジト目で無作為に白と紫の霧をみた。


「なぜ聞くの? 心を読めば分かるわよね」

 “その様子じゃ、自分の口からは言いたくないみたいだね。まぁ……それもそうか。オーパーツ所持者の眷属になるっていう事は、そうでないと駄目だ”

「それで、話ってそれだけなの?」


 そう言われグリモエステルスは、何か考えているようで黙る。


「ねぇ、なんで黙っているの? もう、用がないなら……」

 “いや、まだだよ。君は眷属という事の意味を知っているようにみえるが、そうでもないな”

「どういう事?」


 シルフィアはそう言われ不思議に思った。


 “仕方ないか。バスターへルギアは、儂と違い知識を所持している訳じゃないだろうからね”

「そういうあなたは、知識……知能があるっていうの?」

 “そうだね。儂は、星の理を知る魔導書だ。知らないものは、殆どない。ただ、まだ会った事のない者については分からないがな”


 それを聞きシルフィアは、なぜか怖くなり身震いする。


「星の理を知る魔導書……それって、グリモエステルス」

 “ああ、そうだよ。儂は、グリモエステルスだ。オーパーツのことを知っている君なら、分かっているとは思っていた。それに、あの魔剣よりも格上。それがどういう事か……”

「ええ、勿論よ。まさか……エルが、手に入れているなんて」


 シルフィアの顔は青ざめていた。そうエルが、まさか人食い魔導書とも言われているオーパーツを手に入れていたからである。


 “まぁいい……君は、所持しているオーパーツの眷属を放棄する覚悟があるみたいだからね。ただこれだけは、今後のために教えておくよ”


 そう言われシルフィアは、ゆっくりと頷いた。

 それを確認するとグリモエステルスは、オーパーツ所持者の眷属について説明する。

 シルフィアはそれを黙って聞いていた。


 ――オーパーツを所持している者の眷属は、所持者が死後その権利を得られる。だが、本人の意思では放棄できない。しかし、オーパーツが許可すれば可能だ。

 もし他のオーパーツ所持者の眷属になる場合は話して許可をもらう…………――


 そうグリモエステルスはそう語る。


「それじゃ、私はエルの眷属になれないってこと?」

 “いや、問題ないよ”

「問題ない、って……でも」


 そう言いシルフィアは不安な顔になった。


 “儂なら、可能だ。君の眷属の紋章から、直接へルギアと繋ぐことなどな”

「……それができる。そうだとしても……」

 “そうだね……勿論、目覚めてもらう。それと、エルに事実を話せ……それからになる”


 シルフィアはそう言われて、コクッと頷く。


 “じゃあ、君の意識を体に戻すよ”


 そうグリモエステルスが言うとシルフィアの姿……意識は、この空間から消える。


 “うむ、バスターへルギアか……余り話したくないが。まぁ……大丈夫だろう。いざという時は……”


 そうグリモエステルスが言ったあと、スーッと空間が消えた。

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