ダグル迷宮地下二階層……心底に潜む真意

 エルは目を閉じグリモエステルスに問いかけた。


(グリモエステルス、シルフィアと話がついた。それでどうすればいい?)


 そう言うもエルは、つらそうである。


 “聞いていたよ。だが、お前の決心……まだ定まっていないようだな”

(ああ、本当にいいのかと……思ってな)

 “うむ、違う自分であれば……考えが変わるのではないか?”


 そう問われエルは考えた。


(……そうかもしれない。でも……)

 “もう一面性の自分が嫌いなようだな”

(当然だ。そもそも、アレは自分であっても……能力のせいだろう?)


 そうエルは怒り気味に言うと……。


 “能力のせいか……それだけではない。元々お前の中に隠れていた……いや、抑え込んでいる気持ちの表れだ”

(どういう事だ? 俺の中の抑え込んでる気持ち、って)

 “気づいているのではないのか? 本当は村を襲い母親を殺したヤツらに復讐したい……と思っている。だが、それを口にだしていないだけ”


 そう言われエルは何も言い返せない。少しだけ……心の奥底に、殺してやりたいという気持ちがあったからである。


(そうだな……返す言葉がない。流石だよ、グリモエステルスは……その通りだ。それによく考えると、本来ある自分の気持ちを抑え込んでるのかもな)

 “そういう事だ。どうする……儀式をするのか?”

(考えてたってしょうがないよな。分かった……決断する!)


 そう言いエルは、瞼を開く。


「ごめん、シルフィア。今やっと、決心できた。それと確認もとれたから、今から儀式をする」

「分かったけど……確認って、誰に?」

「話せば分かる。儀式をする前に、話をしたいって言ってたから」


 そう言いエルは、バッグの中から魔導書を取り出した。そして、それをシルフィアにみせる。


「これって魔導書よね。もしかしてこれが、エルの所持してるオーパーツなの?」

「ああ、そうだ。それで、この魔導書がシルフィアと話をしたいらしい」

「話を……って、どうやって?」


 そう問われエルは、魔導書に左手を翳すようにと言った。

 シルフィアはそう言われその通りにする。

 するとシルフィアの意識が、スッとなくなった。

 シルフィアは倒れそうになる。

 それに気づきエルは、シルフィアの体を支えた。その後、シルフィアを地面に寝かせる。


「……大丈夫だよな。話をするだけって言ってたし……」


 そう言うもエルは、心配になりシルフィアの顔を覗き込んだ。


「苦しそうじゃない。これなら大丈夫か……」


 安心したエルは、シルフィアの意識が戻ってくるのを地面に座り待つことにする。

 そしてその間エルは、色々と考えていたのだった。

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