プロローグ……7

 エルは次どんな問題が出されるのかと身構えていた。


 “さて、次はどれにしようか。そうそう……これがいい”


(いったい、どんな問題を出すつもりなんだ? それに中々、問題を出してこない。出す素振りはみせているのに……どうなっている)


 そう思いイライラしながら辺りを見回す。


 “何をイライラしているのかね”

「何って、いつになっても出題されないからだろう」

 “そういう事か。まぁいいでしょう。それでは問題をだすよ。【右手と左手には絵を持っている。持つ手から口絵を取り十にしてください】どうだ! これが解けるかい”


 そう聞かれエルは考える。


(んー……右手と左手、持っている手から口絵を取って十にする。なんなんだこの問題は? 多分普通の問題じゃない。……口絵……右と左……)


 そうこう悩んでいると「ハッ!?」とし、あることに気づく。


「なるほど、そうか。右手の口と左手のエを取ると十になる!」

 “ムムッ、正解だ。よくこの問題が解けたな。まぁいいだろう。ならこの問題は……”


 そう言い問題を次々と出す。エルはその問題を難なく答えていく。

 流石のグリモエステルスも、出す問題が尽きてきた。


 “仕方ない。これが最後だよ。答えられるかな”

「どんな問題でもこい!」

 “剣と魔法、手に入るとしたら欲しいのは?”


 そう問われエルは悩む。


(どっちか選べってことなのか? でもこれは、恐らくそんな簡単な問題じゃない。そうなると……待てよ! もしかしてこれって……)


 あることが書かれていないことに気づいた。


「そういう事か。どっちも手に入るから、欲しいのは両方だ!」

 “……ほう、これも解くとはな。普通なら答えられず断念する。そうでなければ、どちらかを選ぶ。うむ、本当に君は面白い。だが、なんでこの問題が解けたのかね?”

「なんでって、どっちも手で扱える。だから手に入る、と思った。それに、どちらか片方って書いてない。それなら両方選んでも、大丈夫だと思ったんだ」


 そうエルは説明する。


 “なるほど、君は知恵者のようだ。それに度胸もある。儂を使い熟す器として、申し分ないようだな”

「器って、どういう意味なんだ?」

 “要は儂の力を、君の体内に宿せるってことだよ”


 それを聞きエルは嬉しくなった。


「じゃあ、力が手に入るってことなんだよな」

 “そうなるな。まさか、儂の力を手にする者が現れるとは思わなかった。ではそれに伴い、君の名前を聞かせてもらおうか”


 そう聞かれエルは悩む。言っていいのかと。そして問い返す。


「名前って、調べることできないのか?」

 “……”


 そう問われグリモエステルスは黙ってしまった。


「どうしたんだ? 答えられないのか」

 “調べられるよ。本当に君には叶わないな。君は、エル・ラルギエだね”

「調べることができるなら聞く必要ないだろう」


 エルはジト目で辺りをみる。


 “そうだね。これなら、本当に大丈夫そうだ”


 そう言うと周囲が眩く発光した。と同時に、エルの体に異変が生じる。


「うわあぁぁぁあああああ――」


 全身を痛みが襲う。そしてエルは、意識を失った。


 “儂をどう使い熟すか楽しみじゃ”


 そうグリモエステルスが言うと辺りは、パッと暗くなる。

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