EP1 浮気と別れ
アルバイトからの帰り道、僕は見てしまった。僕の恋人にして、ある意味家族とも言える女の子が僕では無い男と歩いていた所を。
彼女はその男と腕を絡ませ合い、仲睦まじく過ごしていた。彼女らは僕が見ている事などつゆ知らず、大通りで唇を重ね合う。
唇を離した彼女の顔は嬉しそうで、僕に向けた事すらない雌の顔を僕以外の男に向けていた。彼女らはそのまま恋人同士の様に、繁華街へと消えていった……
*
どうやってここまで帰ってきたか分からないが、気がついたら僕は自室の玄関にいた。いつ壊れるかも分からない家電に所々カビの生えた机、床に敷かれた布団。本棚すらなく積み重ねられた教科書類とそれら以外は何もない殺風景な部屋。
親と言える存在は既におらず、奨学金と各種支援制度、それと毎日のアルバイトで日々を食い繋いでいる僕がただ寝るだけの部屋。
実の両親は早くに亡くなり、親戚を盥回しにされた果てに名前すら知らなかった遠縁の夫婦に引き取られた。決して裕福ではなかった彼らは僕を快く受け入れ、安らぎの場をもたらしてくれた。けれど彼らも死んだ。病死だった。僕にかかる養育費を稼ぐ為に無理をして働いた事は既に歳を重ねていた彼らの身体を蝕み、僕はまた親を失った。
それでも僕が希望を失わずに生きていけたのは、ずっとそばにいた幼馴染の存在だった。親戚に引き取られた頃、早苗は沈んでいた僕の心に暖かさをくれた。それから僕は彼女といる時間が増えていった。二度目の親との別れもまるで自分のことの様に泣いてくれて、ずっと一緒にいてあげる、そう誓ってくれた。
そんな早苗に相応しい男になりたくて僕は猛勉強を重ねた。全ては名のある大学に入って大企業に就職し、彼女と共に安定した生活を送る為だ。なのに、なのに……どうして……
震える手で僕はスマートフォンを操作する。ここで全てを忘れて、見なかった事にしてしまえば楽だったのかもしれない。けれど僕の本能がそれを許さなかった。数回のコール音の後、目的の人物が電話にでた。
『……もしもし?』
「……サナエ……話がある……」
『どう……し…んぅっ……たのぉ…っ…?』
途切れ途切れなのは電波の問題ではないだろう。甘ったるい声に混じって微かに水音が聞こえてくる。
「今……何をしている……誰といるんだ……!?」
『んっ……今ぁ?……んぁぅ……一人でぇ…あぁっ!家にいるよぅ……?』
怒りを堪えきれず語尾が荒くなる僕を逆撫るかの様な声音に思わず大声を出してしまう。
「嘘をつくな!!さっき男と歩いてただろう!!」
『……見てたんだ。』
彼女の声が変わる。その声色は僕の知らない聞いた事の無い"女"のもので、僕の脳を揺さぶった。そしてその続きを鮮明に想像できてしまう。聞きたくなかったが僕の手はスマートフォンを離そうとしない。
『今……レオくんっ……と居るよあっ……んっ……だから……ぁ……電話中はだめってぇ……』
彼女は嘲笑する様に話す。最早その痴態を隠そうともしない。
「……嘘だ。そんなのって……」
『だって仕方ないじゃない。アンタって私に全然手を出してくれなかったしー?』
「それは……っそれは君が!」
『えっちな事は大学に入ってから、あははっ!そんなの本気で信じてたんだぁ。』
「君が言ったんだろう!だから僕は……」
『そんなの、私がアンタとシた時に処女じゃないってバレるからに決まってるでしょ!』
僕は耳を疑った。もしそれが本当なら彼女はいつから御剣獅音と肉体関係を持っていたのか。
「いつからだ……」
『んー?』
「いつから関係を持っていたんだ!」
『ん〜6月……ちょうど一年くらい前からかな。アンタがモタモタしてる間に、私はレオくんにたっぷり愛して貰ったの♡』
「そんなに前……!?」
『そういう事。ゴメンねぇ、あははっ!』
あまりのショックに僕は言葉を失うしかなかった。怒りや悲しみといった様々な感情が混濁し、まるで脳のブレーカーが落ちたかの様に頭が真っ白になる。そんな僕に追い討ちをかける様に彼女は言った。
『でもねぇっ……アンタが悪いのよ?せっかくの夏休みだってのに勉強勉強バイトバイトって……全く遊んでくれないし。そもそもアンタと行くデートはいっつもビンボ臭いところばっかりで、私はもううんざりだったの。』
「でも……君はそんな僕を支えてくれるって!」
『あーもううるさいなぁ!はっきり言わないと分からないかしら!?アンタなんて私に釣り合う男じゃなかったって事!アンタみたいな貧乏人、もうどうでもいいから。アンタとの将来なんてどうせ考えられないし!』
確かに僕では彼女に相応しくないのかもしれない。でもそんな僕を受け入れてくれる彼女がいたから今まで頑張ってこれた。それなのに……
僕の想いを無視し、先程とは変わって蕩けた声で続ける。
『それに引き換えレオくんってすごいのよ?男らしいし私が欲しいって言ったものはなんでもくれるし、身体もチビでナヨナヨしたアンタと違ってすっごくおっきいの……。』
僕も彼は知っている。本名は御剣獅音。同じクラスで文武両道が人になった様な奴で、しかもこの辺りでは有名な家の末裔だ。けれど悪い噂の絶えない、問題児でもある。
『だからね?私はアンタと別れてレオくんと一緒になる事にしたの!あっレオくぅん待ってぇ』
物音がした後、彼女の声が遠のいて、代わりにスマートフォンのスピーカーから御剣の声が届く。
『よう貧乏人。』
「御剣……!」
『お前の女、めちゃくちゃエロい身体してんなww今度ヤらせてやろうかぁ?』
「ふざけるな!早苗を返せ!」
『返したいのは山々なんだけどよ?早苗が嫌ってんだから返せないな。お前だってコイツの事が好きなんだろ?だったら嫌がる事はしちゃだめだよなぁ?』
「このクズ野郎!よくも早苗を、俺の幼馴染をッ!」
『おwさwなwなwじwみwってお前……ガリ勉くんさぁ、そんなバカみたいな関係がいつまでも続くと思ってんの?お前がそんなごっこ遊びしてる間に、俺はもうこいつのアソコの味も形も全部知ってまーす!』
もう声すら出なかった。スピーカーから聞こえてくる早苗のあられもない声と先ほどの言葉が僕の頭の中で繰り返される。その間も彼女の嬌声は響き続け、電話口から聞こえる淫らな水音が徐々にその間隔を短くしていく。僕はただ呆然と立ち尽くしながらその音を聞き続ける事しかできなかった。
『もう喋んないなら切るよー?ほら、最後になんか言ってやれよ。』
『今までありがとぉ。これから私達で幸せになりまーす!あっでもぉ……後で私のえっちな写真送ってあげるね〜!それでアンタは一人寂しく扱いてなさい……あっ!れおくぅんっ!そこはダメだってぇ……!んぁぅっ……』
「サナエ……嘘だ……嘘だ……」
『あはっ!じゃあね〜バイバーイ!』
プツリと通話が切れる音と共に僕は崩れ落ちた。とめどなく溢れる涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃに濡らし、嗚咽を堪える事も出来ないまま僕は泣いた。
*
通話を切ったのと同時に、レオくんが私の中に熱いモノを流し込んできた。その感覚で軽く致してしまう。
「んあぁ……っこんなにいっぱい……」
私がそれにうっとりしていると彼はキスをしてくれた。そして私のスマートフォンのカメラを向けてくる。
私は脚を開き、秘部に手を添えてそこを広げる。白濁液が溢れて肛門を伝い、シーツに落ちた。そしてシャッターを切る音に身体が反応してぴくりと跳ね、軽く潮を吹いてしまった。
「カメラでイくとか、お前すげぇ変態だぜ?」
「だってぇ……貴方がこんなにしたんでしょぉ……?」
「ま、そりゃそうか。」
彼は私を抱きしめるとベッドに寝転ぶ。大きな体に包まれて、私はこの上なく幸せを感じている。嶺二では感じることのできないそれに優越感と共に浸りながら、彼に話しかける。
「とにかく、これでアイツもお終いね。」
「そうだな。もしこれで退学しなくても、アイツを陥れる方法なんていくらでもある。ま、きっかけとしては上出来だ。……しっかしお前もひでぇ女だな?」
「そんな事言わないでよぉ。貴方が言ってくれたんでしょ?嶺二を退学させたら、お尻も犯してくれるって。」
「言ったけどさ、まさか本当にやるとはな?ケツ弄って貰うために幼馴染にあんな事言うなんて……いい女を持ったぜ俺は……」
しみじみと頷く彼の腕から抜け、私は腰を突き出して肛門を彼に見せつける。
「ほらぁっ……約束通り犯してぇ……貴方に早くシて欲しくて、お尻が熱んおぉっ!?」
言い終わる前に彼は私の臀部を鷲掴みにして、勢い良く息を吸い込む。その空気の流れだけで身体が痙攣し、絶頂に誘われそうになる。
「おえぇくっさ!?俺今からこんな所舐めるのかよ……言うんじゃなかったなぁオイ……」
「ちょっと!女の子に向かってその言い方はないでしょう!?」
「誰が女の子だ!こんなエロいケツしやがって!嫌って言っても辞めねぇからな!」
そう言うと彼は私の肛門に舌を這わせる。嶺二以上の男にお尻を舐めさせているという事実は私の自尊心を満たしてくれる。
そうだ、私は価値のある女なのだ。あんな甲斐性なしに消費させられた無駄な時間はまだ取り戻せる。これからは隠れる必要もない。目一杯楽しもうじゃないか。
あとがき
どうも作者です。登場人物紹介は簡単なあらすじというか、超簡単な過去編なので読んでいない人は目を通して頂けると助かります。
さてこの作品はジャンルの都合上、私の本命より多く読者の方々の目に留まると思っているので、少しばかり宣伝をさせて頂きます。
Magic & Mechanical Heros・魔械戦隊レイ・フォース【女神系幼馴染と征く!ニューヒーロー無双伝!】
https://kakuyomu.jp/works/16816927859817721374
ヒーローとして幼馴染を守る為に奮闘する少年の生き様を描いた特撮・ロボアニメリスペクトの学園物です。知っている人は楽しめて、知らない人はしつこくないから気にならない。そんなオマージュを意識して一文字一句、天元突破爆裂入魂の精神で書き進めております。ぜひ覗いてみてください。泣いて喜びます。
来なかったら芥子粒にします。
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