禍祓怪異譚 ー夢幻のバクー

碧絃(aoi)

序章

 あの青い光は、なんだろう。


 澄んだ空のような綺麗な青だ。


 青い光の玉が、数えきれないほど舞っている。ふわりふわりと舞う光は、まるで蛍みたいだ。


 呼吸をするのを忘れてしまいそうな、幻想的な光景に見惚れていると、青い光の向こうから、誰かがこちらへ歩いて来た。


 黒いワンピースを着た、すごく綺麗な女性。知らない人だ。


 彼女が何かを言っている。でも、何の音もない世界。彼女の声も聞こえない。

 

 声が聞いてみたい。

 この人が誰なのか、知りたい。

 目が離せない。


 女神のような、美しい笑みを浮かべる彼女に抱きしめられると、段々と意識が遠のいて行く。身体が宙に浮いているみたいで、すごく楽だ。何も考えたくない。


 もう何もかも忘れて、彼女と一緒に、ここにいられたら——。

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