第12話 呼び出された先の意外
なんと翌日の事、私と父親は城に呼び出されていた。一体私たちが何をしたというのだろうか。皆目見当がつかない。一生懸命理由を考えたけど無駄だった。
というわけで、城に出向いた私と父親は謁見の間に通された。謁見の間に入ると、そこにサキ・テトリバー男爵令嬢とテトリバー男爵の姿もあった。二人の表情も困惑したような感じを受ける。
長い沈黙の中、二人の男性が謁見の間に入ってきた。よく見ればフィレン殿下ともう一人少年も伴っているので、実質入ってきたのは四人である。多分、あの立派な服装が国王陛下だろう。私たちは頭を下げて座っているので本来は見えないはずだが、こっそりと視線だけは上げて確認している私なのである。
「よく来たな、ファッティ伯爵とその娘アンマリア。それとテトリバー男爵とその娘サキよ」
国王と思しきというか、正面左側の玉座に座っているので、間違いなく国王陛下が私たちに声を掛けてくる。だが、私たちには発言も顔を上げる事も許されていない。なので、今は黙って聞いている事しかできなかった。
「本日来てもらったのはな、先日の洗礼式の事に関してだ。それでそなたたちの話が聞きたい、面を上げよ」
国王の声で、私たちは頭を上げる。なんと、私たちが呼ばれた理由は洗礼式だったのか。
「洗礼式の結果は大雑把ながらではあっても、我ら王族には伝える義務がある。そこで司祭が気になったという人物の名前として、アンマリアとサキの名が挙がったわけだ」
国王が更なる理由を話している。確かにサキは『神の愛し子』とかいう恩恵を貰っていた。魔法の属性も光と氷なので、なるほど、聖女候補という事で抱え込もうというわけか。
ただ、私が呼ばれた理由は分からない。確かに8属性を示す光は出たものの、一瞬だったはずだから分からないはずだ。恩恵だって見た事ないとはいえ、無いと同等の意味合いのメッセージだったわけだし、本当になんで呼ばれたのか分からない。私は心の中で何度も首を捻った。
だけど、それに関しては国王から追加で理由が話される。
「それを踏まえた上で、昨日、フィレンからも進言があった。それが二人を城に招く事になった最大の理由だ」
(はい?)
国王の追加で話した理由で、私はますます混乱した。フィレン殿下が原因で招かれたって事らしい。そうなると決定的な理由はお茶会での殿下の反応というわけか。私とサキの方を見て何かぶつくさと言っていた姿を思い出す。
しかし、一体何のために私たちを呼び出したのだろうか。とにかく私は警戒を強める。そんな中、国王がさらに言葉を続ける。
「我が息子、フィレンの言うところによれば、二人こそこの国の王妃にふさわしいという事らしいのだ。だが、我が国では側室の存在は認められておらぬ。そこで我々の間で議論が持たれたのだ」
国王がこう言うと、国王と一緒に入ってきた男性が呼び出される。顔立ちはよく見ると、攻略対象の一人のタカー・ブロックとよく似ている。父親だろうか。
「私は宰相のバラクーダ・ブロックである。これより話す事を、心して聞くがよい」
あ、やっぱりブロック侯爵その人なのか。こんな風に私は別の事を考えていた。そんなのん気なものだから、この後の事態に対処できなくなるのだ。
「アンマリア・ファッティ伯爵令嬢」
名前を呼ばれたというのに、私は反応しなかった。私が反応しない事に動揺した父親が、慌てて私を小突いてくる。それにすぐ気が付いた私は、周りを見る。よく見れば壇上の宰相が、私をギロリと睨んでいる。
「アンマリア・ファッティ伯爵令嬢!」
「あ……、は、はい!」
名前を呼ばれたので動揺しながらも返事をする私。やっば、完全に不興を買ったわね、これは。
「サキ・テトリバー男爵令嬢」
「はい!」
私の事があったからか、サキはすぐさま返事をしていた。男爵令嬢だから、そりゃ不況は買いたくないわよね。
「これから私が発表する事は、国王の名の下に正式な発表はあるまで、決して他人に話すような事がないように」
宰相のブロック侯爵の言葉が、謁見の間に重く響き渡る。
「フィレン殿下、リブロ殿下、どうぞこちらへ」
「はい」
おおう、フィレン殿下と一緒に居た少年は弟のリブロ殿下だったのか。二人ともいいショタ具合だ。私はついつい、拝むように眺めてしまう。
(はぁ、リブロ殿下ってあの可愛さのまま大きくなるのか、眼福眼福)
私は思わず鼻血が出そうになりそうになるが、そこは魔法の力でぐっと耐えた。
国王の隣に二人の王子が並ぶと、改めて宰相が国王と確認を取り合う。そして、咳払いをすると改めて私たちの方を見た。
「国王陛下や他の大臣たちとも協議の結果、アンマリア・ファッティ伯爵令嬢とサキ・テトリバー男爵令嬢を、フィレン殿下、ならびにリブロ殿下の婚約者候補とする事に決定した。これは殿下たちも了承済みの事項である」
(はい?!)
宰相の告げた言葉に、私は正直耳を疑った。
(いやいや待って、いくらゲームとリアルは違うからとは言っても、まさかこの段階でそういう事になっちゃうの?)
私の頭の中で、いろいろと混乱が起きてしまった。そして、私はそれまで王子たちのショタ姿に必死に耐えていた魔法の力をあっさりと霧散させてしまい、そのまま鼻血を噴いて倒れてしまうのだった。
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