第36話 どうやって送られてきているのやら
また荷物が送られて来た。
今度はかりんとう饅頭と神弾が56発。
通常弾が3マガジン、榴弾が3マガジン。それにこ残ったマガジンは……成形炸裂弾頭か。
精々榴弾までと思って持ってこなかったけど、あれば確かに心強いな。ありがとう、あず姉。
神弾自体はまだ前回の分も残ってはいるが、大切に使わないとな。
ちなみにかりんとう饅頭は静岡にもあるが、やはり味が違う。
俺にはやっぱり、群馬の味があっているな。
しかし本当にどうやって運ばれているのだろう?
群馬エクスプレスは相変わらずこっちには来ていないようだし、現状を知った今となっては本当に謎だ。
「
鍵はかけてあったが、ごく自然に
まあもう慣れたけど。
元々来栖は群馬に関して興味津々だったが、
更に用宗港の戦いで、俺という個人に興味を持ったようだ。
その点は来栖も似たようなものか。
こちらは神弾というより、やはりお連は撃技術に関しての方に興味があるようだな。
そんな訳で、結構この部屋には二人ともよく訪ねてくる。
ただ鍵はかけているし合鍵を渡した覚えもないが、どちらも普通に入ってくるところがなんとも怖い。
まあ……。
「
「へえ、あの子大人しそうに見えたけど、結構フランクなのね」
何度も神弾とかの話をしている内に、なんとなくそうなったんだよね。
だが来栖が恋愛脳だったら色々とうるさくなっていたところだ。
ある意味セーフ。
まあ実際に、そういった仲でもないしな。
考えてみれば人の事は言えないか。俺も高円寺も互いに男女として意識していないし。
……嘘ですごめんなさい。恋心が無いだけで、しっかり意識はしています。
というか来栖もそうだ。彼女に反応しなかったらもう男じゃないぞ。
「それで用件はやっぱり銃の事か?」
「当然そうよ」
そういうと空中に画面が表示される。
今日やった射撃訓練の映像だが、俺も来栖も映っている。
どっから撮影したんだろう?
今日は――というか今日もだが、ランダムに動き回るピンポン玉の様なものを撃つ訓練だ。
普通の射撃訓練のように、丸に十字の的を撃つようなことはしない。
というか、今更あれの真ん中に当てられないやつがいるのか? という感じだしな。
高円寺なんて、動かない的であれば10キロ以内なら外さないとか言っていたし。
その点は獲物が違うだけで、来栖でも出来そうだけどな。
それで本題に戻ったが――、
「やっぱり何度見ても確実に当てているのよね」
「それに関してはお互い様だと思うが?」
取り回しがきく事を加味しても、来栖の射撃技術は群を抜いている。
結局あの射撃訓練中で、1発も外さなかったのは俺とこいつくらいだ。
「でも当て方が全然違うでしょ。これを見て」
映像が超スローモーションに切り替わる。
とは言っても最初から最後までそれをやられたら寝てしまうので、途中の速度は変えてあるが。
「うーん」
まだこの話が続くのか。
まあ彼女にとってはどこまで信用して背中を預けられるかって話だしな。
だけどこちらも正確に説明する事が出来ない。
というか、何て言ったらいいのか分からない。
動くピンポン玉の的は、別に魔法で浮いているわけではない。
外側にドローンの様なプロペラが多数付いており、それらが内側で起こす乱気流が不規則な動きを生む。
だが来栖はその不規則な動きを読み切り、動いた方向にきっちりと撃っている。大したものだ。
そして改めて自分の撃ち方を見ると、確かに変といえば変だ。
撃った瞬間の軌道を見ると、確かに見当違いの所を撃っている。予測線が出るが、見事に大外れだ。
だが現実は違う。まるで的の方が弾丸に吸い寄せられるように移動して命中する。
どれもそうだ。
ただ実際はというと、俺は弾が通る起動が見えている。
「うん、自分の射撃の腕には自身があったが、こうして見ると下手だな」
今はそう言ってごまかしておこう。
「でも全部当たっている。どう考えてもおかしいのよ。まるでこう動くって予測して――ううん、これはもう予知レベルよ」
「そうは言われても自覚は無くてな。確かに当たってはいるが、この予測では俺の弾は全弾外れコースだ」
「だから、それでも当たっているのがおかしいのよ。ねえ、これってタヌキの力なの?」
「俺が人間だって事は確認しただろうが」
「じゃあ両親がタヌキ?」
「人間だったよ」
「――あ、ごめんなさい」
「いや」
俺はまだ、一度も来栖に身の上話をした事が無い。
でもあれだけで気が付くのか。
思ったよりも遥かに心の機微に敏感だ。
それだけに、最初の反応が思い出される。
握手をした時の反応。その後に高円寺から聞いた話。
こいつもまた、心に傷を付けながら生きて来たんだな。
「じゃあ曽祖父がタヌキなのかしら?」
一瞬しんみりした俺の心を返せ!
「祖父も祖母も同じだ! 人間だよ、人間。本当に、その群馬県民に対する偏見を捨てろ!」
「うーん……でもねえ」
「話は聞かせてもらった!」
まだ納得できなさそうな来栖の言葉を遮って、ドアから二人の男が入って来た。
ここのドアはオートロック。
ドアを閉じた時点で鍵がかかる。セキュリティのためらしい。
だがこいつらも平然と入って来た。セキュリティという言葉をいつか辞書で調べなおしたい。
男の片方は少し小柄か。身長は162センチくらいかな?
かなりのショートカットだが、俺よりオレンジ色の方が目に行くか。
瞳はくりくりと大きく、好奇心旺盛でキラキラとした瞳を見ると、何というか少年の様だ。
その瞳の色は普通に黒なのだが、白目の方が少し水色がかっているのが特徴か。
他に特出すべきところはない。本当にごく普通の少年に見えるのだが、ここに来る人間が普通のはずがない。
もう1人の男性はもっと背が高く痩せ型だ。身長は178センチ程。すらりと長い手足にスリムなボディ。そして頭は小さく、男から見ても絶世の美男子。
筋肉質で大柄の俺とは完全に真逆。生きている世界が違う別人種だ。
髪は腰まで長い黒に限りなく近い濃紺だが、先端は水色だ。
あそこだけ染めたのか?
それとも元があの色で今の色に染めたのか?
まあどちらもないだろうな。
釣り目で鋭い瞳の色は
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