第9話事故

南から北へ延びる車道にキープレフトを守りスクーターが走っていた。

甲はカフェのスキップフロアから北側の窓を介し駅前道路の風景を観るのが好きでよくこのスキップフロアから窓外を眺めていた。

 今度書く新作のアイデアを求めて、窓外を眺めていた盂蘭盆会の午前四時半、勿論甲は、日本の新人作家で苦節10年目にしてタイトル「烏原・からすはら」で新人賞を受賞してそのままデビュー、ラッキーな事にデビュー作「烏原」が大衆に受けてあれよアレヨと言う間に重版出来を重ね、初版から200万部も刷られて茶川龍之介(ちゃがわりゅうのすけ)章を受賞した。

 このビルはそれの印税で建築された。

経費節約で木造軸組みの4階建てを計画したが、駅前の地域協定では防火地域に指定されていて断念。

 決まりは決まりで、どんなに足掻いても木造というだけで確認申請は却下された。

 それならばと、SRC鉄骨鉄筋のラーメン構造とまでは行かないが、RC構造で防火仕様のマイビルディングを建築して、自宅兼収益物件に転向、1Fに甲経営のカフェ、2Fに甲経営のリフォーム会社、3F、4Fにはテナントのスナックが4店舗入ってテナント料で甲ファミリーの生活を賄っている。

 

 飲み掛けのメロンフィズに氷とレモンを入れようと席を立った。キキキーーッ! ドン!という追突音が炸裂したので、腰窓から覗いてみると、車のフロントガラスが粉々に散乱してスクーターがぐちゃぐちゃにへしゃげていたが、観る影もなかった! 事故現場から約10数メートル先に中年男が、倒れてピクピクしていたが、飛ばされたのかスクーターが壊れたから歩いて行くも力尽きたのか判然としなかった。

「チッ!死ねば?」と舌打ちをして毒舌を吐きメロンフィズを残りの水面から一mm足し元の窓際に戻った。

 ソファーに腰を下ろして朝まで此処で寝ようと椅子に凭れウトウトしていた。

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