素直になれない系幼馴染は(本音を)漏らしたい【幼馴染の女の子が脳内に語りかけてくる】

しんしん

第1話 教室

脳内( )

口頭「 」


SE//教師が授業をする声。


(おーい、こっち向いて。『ナデちゃん』が呼んでるぞ~。こっち、むけ~)//右耳から


(やっほー。なんか歴史の授業むずかしくてさ。気分転換に君の顔を見てやろうと思って。あー! 何その顔。邪魔すんなみたいな。これはね、テレパシーの実験であり有効活用なんだよ? この実験に世界の命運がーって冗談、冗談。こっち向いて~ごめんよ~)


(ちょっとだけでいいから、私にかまってよぅ。かまってくれると嬉しいなぁ。ねぇねぇ)//甘えるように


(やったあ。ありがと。じゃあさ、じゃあさ、脳内ゲームしようよ。まえ、うしろ、みぎ、ひだりのどれかから声をかけるから、どこから聞こえるか当ててみて)


(え? 当たったらいいことあるのかって? え~、二人だけの会話でそれ言っちゃうの? えへへへへへ。えっち! いいことなんてありません! まったく、幼稚園の頃の君はそんなんじゃなかったぞ。純粋で、それはそれはかわいい男の子だったのに。大人になってしまって……ナデちゃんは悲しいよ……。さて、気を取り直してと、じゃあ、いくよ~)//少し溜める


(ひ・だ・り、でした~)//左側から声が聞こえる。


(当たった? 答え見せて。ノートに書いたやつ)


//ノートに書かれた文字を見せる。


(正解!! お姉さんが褒めてあげよう。えらい、えらい)


(あ、今私の身長バカにしたでしょ? ふん! この前の身体測定でついに140㎝になったんだから。高校生になったし、これから成長期なんです)


(じゃあ次にいくよ。今度は難しいよ~)


(まえ、うしろ、でした~)//前側と後側から同時に声が聞こえる。


(何その顔。ずるいって言いたげだね。ふふふ、正解が一つだなんて言ってないもん)//いたずらっぽく


(テレパシーさ。最近、以前より上手に使えるようになったんだよね。やっぱり君だけにしか言葉を送れないけど。こんなことも出来るようになったんだよ)


(いいこ、いいこ)全方向から立体的な声


(あはは、びっくりしてる。 すごいでしょ)


(え? 昨日の寝る前に同じことをしてただろって? バレっちゃったか~。よく気が付いたね。分からないようにテレパシーを送ってたんだけどな。私もまだまだだ。なんというか、サブリミナル私みたいな。潜在意識に私を刷り込んじゃえ的な。ふふふ、君は実験体なのだよ)


(あ、先生! 先生見て! 君のこと指してるよ。空欄の答えは何かだって! え、聞いてなかったって。そうだよね。えっと、えっと……スパルタ! 答えはスパルタ!)//必死に伝えようとしてる。


//無音。間。


(……ごめんね……アリストテレスだったんだね……。なんでスパルタって書いちゃったんだろ……)//もの凄く申し訳なさそうに。


SE//チャイムの音

SE//生徒たちの話声


SE//こちらに足音が近づいてくる。


「アリストテレスにしてやられたね。一つ勉強になったよ。やっぱり授業中にテレパシーはいけないね。先生がなんて言ってるかさらに分かんなくなっちゃう」


SE//ナデちゃんペットボトルの水を飲む。


「ぷはぁ! ふう。クーラーの温度ちょっと高いよね~。少し汗かいちゃった。君も熱そうだし……よし、私がノートで扇いであげよう」


SE//ノートで扇ぐ音


「あはは、なんか王様みたい。それじゃあ、隣に座って仰がせていただきます」


//左側に座る。


「ほれほれ。どう? 気持ちいいかな? ちょっと涼しくなったかな? えいっ! えいっ!」


SE//左耳に息が吹きかけられる


「おしまい。今度は私を気持ちよくして欲しいな……」//左耳にささやくように。


SE//ノートで扇ぐ音


「じょうず、じょうず。がんばって、がんばって。そんなんじゃまだ全然だよ!」


//言葉を遮るように脳内に声が響く。


(はぁ……すっごい……気持ちいい……)//脳内全体に。思わず声が出る感じで。


「……」//二人とも沈黙。


「あ……あ……今のなし! 今のなーし!! ちょっとニヤニヤするのやめて!! 変態!! 無意識につないじゃったの!! わざとじゃないの!!本当に今のなしーーー!!!! 恥ずかしいからあああああ!!! ばかあああああああ。忘れろおおおおお」

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