【完結感謝!!】再会した師匠が勇者パーティから追放されてブッ壊れてた
ババセン・ロリモスキー
第一章 再会編
プロローグ『弟子、旅立つ』
『それでは、カザク。私が居ない間も鍛錬を怠らないこと、それから――』
これは忘れもしない日の記憶。
師匠を……俺の大事な人を、ヤツらに連れていかれた日の回想。
師匠が勇者パーティと共に“鎮災の旅路”へと発った日に見た、最後の景色。
止める言葉は山ほどあって、けれど、その資格はどこにもなくて。
俺に出来ることといったら、別れの言葉に沈黙で返すという無様な不義理だけ。
そんな情けない俺にも、師匠は優しく微笑んでくれた。
そうして手を握ってくれて、真っすぐ見つめてこう言った。
『――カザク、アナタにも試練を課します』
『試練……?』
『ええ。この山に住まうヌシをアナタの力だけで打ち倒すこと、それが試練です』
それは今にして思えば――いや、当時の俺以外ならすぐ分かるような、バカな弟子を宥めるためだけに用意した形だけの試練。
孤独に耐えられない子供にせめて気を紛らわせるようにと用意してくれた、優しさの形。
『もしそれを果たせたら、その時はアナタも冒険者となることを許しましょう』
『本当ですか!?』
『ええ。私が使命を終えて帰ってくるのが先か、アナタが追い付いてくるのが先か……ふふっ、競争ですね』
『は、はいっ!! 追い付きます!! 俺が、必ずっ!!』
口元に手を当て笑う師匠に、俺も力強く返事する。
そんないつもと変わらないやりとりをして、俺たちは互いに背を向けた。
師匠は使命を果たして帰ってくるために、俺は一日でも早く師匠を追いかけるために。
再会のために遠ざかる距離は、先程までの名残惜しさが嘘のように心地よいほどで……いや、嘘だ。
遠ざかっていく背中を見るのが辛くて、いつかの再会に目を向けた方が心が楽だった、というのが、正直なところだった。
それに、師匠のお姿はそのすべてが尊く素晴らしいものだが、勇者とかいう輩に付き従うお姿はどうしても師匠・ザ・ベストの中だと順位がいくらか落ちる。
ゆえにしばらくお預けだからと無理に網膜に焼き付ける必要もないという判断だ。師匠の素晴らしい姿は他に天に届くほどの量を脳内に刻み込んでいるのだから。
そう例えば――
「――と、いかんいかん。流石に物思いに耽り過ぎだ」
はっ、と我に返る。
タイミングがタイミングだけに、かつての別れの日に想いを馳せるのは必然だろう。
だがそれ以上は過分だ。必要ない……というのは、語弊があるか。師匠との記憶を思い返すはいつ何時であろうと有意義なのだから。
だが、それでも、今だけは、優先すべきなのは回想ではなく行動だと断言できる。
なぜならば……
「思い返すまでもなく、もうすぐお会いできるのだから……!!」
自らの足元で倒れ伏す有翼の大蛇――マッドコアトル。
この山一帯の主たる魔獣にして、師匠から与えられた打破すべき試練。
俺はそれを今まさに打ち倒したのだから。
一年の時を経て、ようやく師匠の後を追うことができるのだから。
もう恐れ多くも思い出からお作りさせて頂いていた空想上のエア師匠で心の隙間を埋める必要もないのだから!!
「待っていてください師匠っ! このカザク・トザマっ! 今すぐ会いに参りますっ!!」
ようやく倒したマッドコアトルを……師匠に会える約束手形を天へと掲げ、俺は心の底からの雄たけびを上げた。
この日のために支度は常に万全だ。
この山から冒険者ギルドへの最短ルートも把握済み。
後はただ駆け抜けるのみ。師匠のその背に追いつくまで。
一年間、あの約束の日から止まった俺の時間が、ようやく動き出すときが来たのだ――っ!!
――――――――――
プロローグ読了ありがとうございます!
『続きが気になる』『おもしろい』『読みやすい』。
そんな風に思ってくださった方は最初の画面の”フォロー”や、このすぐ下にある"応援"、星を押した次のページにある+を押して評価やレビューをして下さるとすごく嬉しいです!!
次話”第1話『弟子、ギルドにて師匠の名を轟かす』”は本日夕方18時頃に投稿予定です!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます