第73話 突発深夜デート


「緩い風ですけど、心地いいですね」


 地上の船着場で地面を踏むと、新協会長はそう言った。

 クルーザーにスーツが用意してあったため、先ほどの花魁のような装いから普段の新協会長の装いに変わっている。


「久しぶりの風は気持ち良さそうですね」


「格別ですよ。私以外に誰にも味わえない風ですから」


 風だけでここまで幸せそうにするとは、表には出していないが、相当に苦労して来たようだ。

 期間はよく知らないが、それくらいに長かったのだろう。

 前回の相間さんとは違い閉じこもっていたわけではなく、閉じ込められて、出たくても出れない状態だったのを含めて考えると察してあまりある。


「誰かに迷惑をかけない範囲で心労を癒してください」


「もう行かれるつもりですか、釣れないことを言わずに付いてきてくださいよ、旦那様。行きたいところがあるんです。夜道に女一人は危険ですから」


「はあ、いいですけど」


 返事をすると左腕に抱きつかれたまま、深夜の街を歩くことになる。

 側から見たら残業後に惚気を爆発させる職場恋愛の人だが、同情している分、無碍にするのは気が進まない。


「ここです」


 しばらくすると、年季の入ったラーメン屋の目の前に来た。


 ーーー


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