第58話 ダンジョン振興地域
タレントの所属する事務所は慰安旅行するイメージはなかったので、まさに青天の霹靂だった。
ダンジョン協会と共同の慰安旅行ということで、費用はあちら持ちらしい。
ダンプロとしてはホワイトな企業であることをアピールするために、タレント含めて三日間休業ということをSNSで発表した。
前から滞りなく配信していたこともあり、一部のリスナーたちからも休んだ方がいいという意見が出ていたので、タレントとダンプロを労るようなコメントの方が多く、反対意見はなかった。
「大盤振る舞いね。うちの社員とタレント100人近いっていうのに。泊まる場所も移動手段もお金も全部用意してくれるなんて」
「流石公的機関だな。私企業がこんなことをすれば、一発で倒産の危機になりかねない」
ダンジョン協会から手配されたバスに乗りながら、隣に乗ったアリサと他愛のない話をする。
こうやって、特にこれと言った目的のない時間を過ごすのは久しぶりだ。
「目的地は海底ダンジョン『殺生石』の周囲の港で開発が進んでいるところだったか」
「ええ、阿倍野大臣肝入りのダンジョン振興地域。カジノとかも作られてるみたいでもしかしたら、協会長権限で一番乗りできるかもね」
「カジノはやめとけ。お前は毎回パチンコでも負けるからな。器用すぎて運に頼る機会が少ないから適正がない」
「パチンコとカジノは別物よ。適正があってもおかしくはないわ」
「三日めの観光時間までにダンジョンを攻略して、お前を見張る必要がありそうだな」
アリサは賭け事に弱いが、のめり込むタイプなので、レートの高いカジノなどやれば一瞬で破産する未来が見える。
ダンジョン攻略の危険性よりもこいつが破産する危険性の方がよほど高そうだ。
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