第29話 限界の先


 最前戦の戦闘の苛烈さは増していく。

 アスカに大技を繰り出されたことで、エボリューションはさらに派手な大技を繰り出す必要に駆られていた。

 ゴールは五層で今は四層の終盤。

 ここで返せなければこのまま、アスカに場が飲み込まれたまま終わる。

 そうなれば、もはや勝つことなど不可能。

 エボリューションがこの場所で戦っている意味がなくなる。


「うおおおおおお!」


 水魔法で波を起こして敵にぶつけ、魔力を枯渇させると、魔力回復が始まると同時に水魔法で波を渦巻に変えて、メガホースをふるい回す。

 水の質量の大きさに翻弄されたメガホースが背中から地面に倒れ込むと、魔力による変容が腑に及んだためにエボリューションは喀血する。


 ・すげ!

 ・水魔法だと水の重さで巨大種でもブン回せるのな

 ・エボちゃん大丈夫か? 結構血流れてけど

 ・剣道ニキとかアスカスは気にせんでええやぞあれは人外やし

 ・エボちゃん今日絶好調じゃん

 ・いいぞもっとやれ

 ・澄ました顔で戦わんのいいぞ、お遊びじゃないのが伝わってくる

 ・うお、今ので同接5千万行った!

 ・エボリューションがオールスター配信でエボリューションってこと!?

 

 リスナーのコメントで序盤にアスカが到達していた場所の半分にしか到達していないことにエボリューションは絶望する。


 ・アスカス2億おめ! 公式配信の時のヒカリたそに届いたで!


 彼が奇跡や血反吐を吐くような無理をしても、アスカの四分の一ほどでしかなかった。

 限界を超えても同位置にさえ辿り着きさえしない。

 出せるもの以上のものを差し出していると言うのに。

 

 残りの猶予は残り一層。

 巻き返すにはあまりにも心許ない。


 悔しい。

 悔しいがもはや諦める方が賢明なのは明白だった。


 ・おい、エボちゃん動かんくてなってるやん

 ・流石に絶好調のエボリューションも疲れたか

 ・家に帰るまでがダンジョン配信ってエロい人が言ってたぞ! 動け!

 ・頑張りすぎてるくらいだったし、しゃあない

 ・エボちゃん今バズってんだし、頑張れよ。 こんなチャンス二度とないんだし


 機械音声のコメントが聞こえているが、頭の中で理解されずにそのまま通り過ぎていく。


「どうした、エボリューション? なんで手を止めているんだ?」


 エボリューションが全てを投げ出そうとしている最中にインカムから担当マネージャーの谷崎の声が聞こえた。



ーーー


よろしければ、フォロー、いいね、星お願いします!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る