新・生徒会発足!

 

高等部では、クラス分けへの異議申し立てのための二週間の猶予期間が過ぎ、新しい生徒会役員を選ぶ時期になっていた。


会長のウィルと副会長のアンソニーを除く、他の生徒会メンバーは全員卒業してしまったため、新たに書記を一名と、補佐メンバー三名を選出しなければならなかった。


生徒会の役員になるためには、五人以上の推薦人の署名を集める必要がある。自薦もOKなため、最低四人の推薦人を集めれば立候補が可能だ。一応、Sクラスに限らず、全クラスからの応募が可能なため、前年度までは結構な数の立候補者がおり、新メンバーが決まるまで数週間を要していた。



「今年度の生徒会活動に従事する学生の名前は、各階の廊下の掲示板に張り出されている。名前が出ている生徒は今日の放課後に生徒会室に集合する様に」


 だから、一時限目の終わりに先生が告げた時には、生徒達はみんな一瞬ポカンとしていた。


「え?いつの間に決まったの?」


「あれ?そもそも今年の立候補者って誰?」


ざわめく生徒達に、アリスは何故か嫌な予感がした。



「な、なんですの、これは…!」


授業が終わると同時に掲示板を見に行ったアリスは、そこに自分の名前を見つけて愕然とした。


「わ、私が、生徒会書記ですって⁈」


思わず声を上げた後に周囲に生徒達の目があることに気づき、咄嗟に公爵令嬢の仮面を被り直すが、驚きは隠せない。


「わあ、アリス様が書記だなんて、ぴったりですわ」


「聡明なアリス嬢になら生徒会の仕事も安心して任せられるな」


生徒達は口々にアリスへの賛辞を述べるも。


(え、いや、待って、そもそも立候補すらしてないんですけど!)


一年生の時も推薦したがる周りの声を何とか黙らせて、生徒会入りをスルーしたというのに。


(まさか、あの腹黒王子…)


考えられる原因は一つしかなかった。



と、そこに三年生の教室から出てきたポールも驚きの声を上げた。


「なんだよ、なんでクラリスの名前があるのに俺の名前がないんだよ!」


三名の補佐メンバーの一人に、クラリスが選出されていた。後の二人はクラリスのクラスメイトである、ダンリーとサラだった。



「皆さん、お静かに。生徒会長がお話されます」


淡々と告げるアンソニーの声に、ざわめいていた生徒達が静かになった。


「今年度の生徒会メンバーだが、先生方とも相談して、私とアンソニーが選ばせてもらった。三年生が卒業した後に困らないように、一年生から多く選びたかったからだ」


ウィルがよく通る声で、生徒達に告げる。


「もしこの決定に不服があれば、私かアンソニーまで言ってくれ。できるだけ、多くの生徒の要望に沿うように善処する」


ウィルが話終わると同時に生徒達の間から、一斉に拍手が起きた。承認の拍手だった。

  

(やられた…!ここで異議申し立てなんてしたら、それこそ顰蹙よ…)


反対もできず、アリスは射殺しそうな目でウィルを見る。すると、目が合ったウィルは心底嬉しそうに微笑んだ。




「え?私が生徒会補佐ですか…?」


先の授業の振り返りをしていて掲示板を見ていなかったクラリスは、サラとダンリーの言葉に耳を疑った。


「そうなの。一年生から私達三人が補佐として選ばれたのよ!」


「まさか俺が選ばれるなんて思わなかったけどな。まあ、サラと一緒にいられる時間が増えて嬉しいけど」


「まあ、ダンリーったら!」


ちなみに、サラとダンリーはS階でも有名な仲良しカップルだ。


「お二人が選ばれるのは納得ですが、どうして私が…」


目の前でハートを量産している二人を見て、クラリスは思わず遠い目になる。


「もちろん、クラリス嬢が優秀だからだよ」


「そうですわ!クラリス様、一緒に頑張りましょうね!」


ニコニコ顔のサラに両手で右手を握られて、ひきつり笑いを返すしかないクラリスだった。

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