転生者大戦~ウィナー・アンド・ルーザー~Ⅱ

七四六明

開幕

勝者vs敗者

開戦宣言

 記者会見会場。

 対戦チームの両監督が隣り合って座り、絶対に視線を合わせない。

 片方は静寂を保っているが、もう片方がケタケタと笑っている光景は、彼らの実績と経験値の違いを物語っていた。

 静寂を保つ方は場を弁えているが、笑いを留められない方は分を弁える必要がある。

 総合一位とまではいかないまでも、トップスリーの座をずっと温め続けて来たチームと、未だ一度も勝った事のない弱小チームとでは、勝ちに対する執念も価値も違う。

 が、一つだけ間違えてはいけない事がある。

 笑い転げるチームの監督は、これまでと言う事だ。

 異世界に転生した者達を集い行う、七対七の個人戦。

 どちらのチームが何勝し、また、誰が勝つのか。男はその予想をほとんど当てて、賭け金を収集。次の戦いに向け、転生者を集う資金にする活動を何度も続けているのだから。

南條なんじょう監督! 次の対チームヴィクリア戦は、どのようにお考えですか?」

「ケッ! 結果を先に言っちまったら、盛り上がらねぇだろ? 誰が勝つか分からない、一挙手一投足で勝敗が転げるシーソーゲーム。だから、敢えて言わせて貰うぜ」

 中学生でもあるまいが、南條なんじょう利人りひとは机の上に上がり、ヴィクトリアの監督ヴィクトルと相対。満面の笑みを向けながらしゃがみ込むと、親指で首を斬る動作をしてから、そのまま下を指した。

「次こそは俺達の、チームルーザーの勝ちだ! 久方振りの敗北、噛み締めて眠れよ。最古参」

「相変わらず礼儀がなってないな、南條監督……だが、そうして他人に掴ませないのも、君の戦術なのだろう」

 二人は真正面から向かい合い、握手した。

 力強く握手する双方の手には、出来る限りの力が籠っている。

「上等だ。真正面から受けて立つ。チームヴィクトリア。その名に恥じぬ戦いをしよう」

「やれるもんなら、やってみな。勝利の女神は、どっちに微笑むか。楽しみじゃねぇか。最高のエンターテインメントにしようぜ」

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