第7話 普核の覚醒
「……あれ、俺」
「目覚めたか、少年」
鮮一はゆっくりと瞼を開ける。
そこには真っ白な華奢な男が目の前にいる。
包帯を顔面や服の上にも巻いた白コートと死人のように白い肌。
異質さも覚える生気のないローズ色の瞳……はっきり言って、一回見ただけでは普通の人間なら恐怖心を抱くのは必須だ。
黒い手袋をした手が、俺の胸元に置かれていた。
俺は状況が理解できず、上半身を起き上がらせた。
「アンタは、誰だ?」
「説明は後だ、今はベスティアを何とかすることを優先するべきだろう」
「ベスティア……?」
もしかして、俺を襲ってきた怪物の名称……?
俺は激しい爆発音が聞こえると、すぐに視線を男から変えた。
「……っ、染織!!」
俺の大切な、ずっと探し続けてきた、たった一人だけの妹。
整えられた衣装だが、なぜかハーネスという物が上手い具合に服として違和感のなく成り立っているワンピース、いや、ドレスともいえるのか? この包帯男の趣味なのかと問い正したくてたまらないが、今はそんなところではない。
それが、俺を襲ってきた化け物と戦っているではないか。
「――兄さん、目覚めたのですね」
染織は怪物と交戦していて、長さ違いの双剣の二つが握られている。
刀身は漆黒で、持ち手が深紅色で薔薇の模様の上に月の模様が刻印された特殊なタイプの剣のようだ。俺たちを庇いながら、あの怪物の攻撃を避け切っている。
「染織! 逃げろ!! そいつらは、」
「なら兄さん、一緒に戦ってください。普核を起動させたのならその普核に宿った力を扱えるはずです」
「宿った力って、一体、何を言って――」
確か、サナーリアの起動で俺が行き変えった、はずだ。
染織が怪物から距離を取ったのを見計らった白男は俺の右肩に手を置く。
「彼女を助けたいのなら、念じなさい」
「は!? 念じるって、何を!?」
「彼女を助けたい、その願望があるなら普核は君に適した力を作る――――難しい話じゃない。目を閉じて集中すればいい」
「で、でも、」
「君がしないなら、彼女は死ぬだけだ――――いいのかい」
「……、やればいいんだろ! やれば!!」
白男に言われ、苛立ちながらも俺は目を閉じる。
普核とかベスティアとか、今は全然わからないけど、集中をすればいいんだよな。中二病的な作品を例に挙げるならやっぱ特殊能力とか超常的な力、だよな。
でも、俺って特別そういうこと想像できるわけないし。
たまに、家で家庭用ゲーム機とかで遊んでいた時とか、洋ゲーとかで色々な武器が出てくるゲームをプレイしたことは数多くあるが、俺のスタイル的に遠距離タイプ、だと認識している。
別にファンタジーの役職なら魔法使いが好きとかそういうタイプじゃない。むしろ、それよりは確実にプレイしたことのある武器なら、自分の中で想像できる。
俺は強いて戦うとするなら、強いてしっくりくるものと言ったら――――あれしかない。
「謳え――――
赫灼よりも瞬いては灯る、人々の人生を表わした命の炎よりも激しい輝きを放つ武器は顕現する。純白を取り入れられた体躯は繊細な作りな外観である銃身に太陽の横に雫の刻印が施されている。銃身の長さが互い違いになっている二つの銃だ。
妹の染織が双剣とするなら、兄である鮮一には双銃が握られている。
まるで、お互いを対をなすかのようなイメージだ。
「――これが、俺の武器?」
お、おぉ! なんかカッコいいじゃないか! 装飾されたこんな銃で戦えんのか!? 実用性はないわけじゃないと思いたいけど、洒落たデザインだ。
……中学や高校時代の黒歴史的な俺の中二病心が燃え上がるじゃないか。
「戦闘はできるかな、少年」
「は!? 実銃なんて経験あるわけないだろ!?」
「君がゲームでやった時のように、想像で銃を放つイメージで戦えばいい」
「は!? た、確かに俺、エイムは多少の自信はあるけど……ん? なんだ? これ」
視界に急にサバゲーなどの赤いポインターが現れる。
もしかして、これをどうにかすれば……戦える?
「や、やってやる!!」
鮮一は銃を改めて握り直し、ベスティアと対峙する。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます