第3項
会社は何も変わらない。
変わることといえば、一緒に働く人たちの服装くらいだ。
オレンジ色の華やかなカシミヤのマフラー。
昨日は上品な薄紫色だったと思うが、いったい何本のマフラーを持っているのだろうと首を傾げそうになる。
仕事も何も変わらない。
単調という言葉がこれ以上に似合うこともない。
誰でもできるという仕事に、自分にしかできない何かを探す。
きっとこの仕事をこのクオリティでこなせるのは自分以外にそんなに多くないはずだ、と。
自分以外にいない、自分が一番だと思うほど自信はない。
いつも、今より自分に似合う場所がどこかにあるような気がしている。
色とりどりのマフラーとは反対に自分の世界は彩りを失ってしまっている。
ふいに今朝目に入った雑誌のタイトルが頭の中に蘇ってくる。
「モノクローム現代」
凹凸の加工が施された明朝体の白色のタイトルと黒とも灰ともいえない色に染められた表紙に目を奪われて買ったものの、読み進めることなく数日が経っていた。
家に帰ったら読んでみよう。
単調さに彩りを加える相棒を携えて、仕事と向き合っていった。
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