魔王復讐劇

Cris

プロローグ 在りし日の記憶

 父さんが僕を呼ぶ声が聞こえる。顔を上げる。父さんと父さんの友人が、穏やかに笑っている。


「おぉ!こっちを見たぞ!」

「おまえの息子はかわいいなぁ」

「あらあら」


 左側から声が聞こえる。顔をそちらに向ける。


「わたくしたちにも、もうすぐ子どもができるというのに、ふふ」


 父さんの友人の奥さんは、優雅な所作でほほ笑む。そのかたの向かいに座っていた母さんが、少し驚いたように言う。


「あら、おめでとう!体調に気をつけてね」

「ええ、もちろん。ありがとう」

「産まれたら俺たちにも会わせてくれよ」

「そりゃ会わせるさ。これからも同盟国どうし、仲良くしていこうじゃないか!」


 みんな笑顔だ。とてもやさしい笑顔。このまま、この時間が続けばいいのに。


 でも、そんなことには、ならない。

 そんな願いは、叶わない。

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