第25話 ばらまかれた写真 1ー3 (花野井美澄side)

 ピークに達していたと思う。

 靴を隠され、教科書に落書きされ、机を傷つけられ……。

 しかし抵抗すれば写真を突きつけられ、脅される日々。

 辛いと思った。もう限界だと思った。誰かにすがり付きたかった。

 でも、できない。してはいけないのだ。

 

 今回のことは、自分が招いた種であり、完全に自業自得。

 パパ活をしているのは事実だし、責められる理由は明確にある。

 我慢してそれで済むのならば、私はあまんじてこの現実を受け入れよう。

 

* *  *


 同じクラスの間宮まみやさんは、自販機で購入したのであろう牛乳パックの口を開き、私の頭からそれを注いだ。

 牛乳をかぶった私は唖然あぜんとする。

 何の脈絡もなく突然、彼女がそんな行動に出たからだ。


 「……何か用かしら」

 「何か用、じゃねえんだよ。理由なら分かってるよねえ? アンタ、アタシの彼氏誘惑したでしょ……ッ」

 「……?」


 訳が分からない、と思った。

 高校に入学してから、私は谷上くん以外の男性と関わったことがないのだ。

 もちろん班内での交流活動など、必要最低限の会話はしたことはあるものの、誘惑などという行為をした自覚は微塵みじんもなかった。

 それにこの人の彼氏が誰かなど知らない。どう考えても冤罪えんざいだ。


 「勘違いじゃないかしら」

 「勘違いじゃねんだよ。勘違いじゃなかったから来てんだよ。さっきアタシ、彼氏に何て言ってフラレたと思う……? 花野井さんが好きだからって……私にはもう興味ないって……ッ」

 「……そう。でもごめんなさい。心当たりがないわ」

 「ざっけんな……!」


 右頬に衝撃が走る。

 気がつけば、私は椅子から転げ落ち、地べたにいつくばっていた。

 鉄の味がする。口の中に血がにじむ。

 

 その時には、もうこらえきれなくなっていた。

 何故私ばかり、こんな目に遭わないといけないのだろう。

 私が見ているのは谷上くんただ一人だけで、それ以外にはミジンコほどの興味もない。それは彼女の彼氏だって同じことだ。

 それなのに話も聞かず牛乳をぶっかけ、挙句の果てには手まで上げた。

 涙があふれてしまうのを誰が止められようか……止めてくれる人がいるのなら、是非ぜひともお願いしたいものである。


 「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!」


 その時、ドタバタと激しい足音とともに、奇声が教室中に響いた。

 そうして乱入してきたのは。


 「ブッ……!?」


 その姿を目にして、私は思わず吹いてしまった。


 この学校の女生徒が着用するセーラー服。

 ツヤツヤとした質感のいかにも高そうな黒髪ロングのカツラ。

 そして……剃り残しのすね毛。


 何故か女装をした谷上くんが、そこにはいたのだ。



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 伏見ダイヤモンド

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