第24話 ばらまかれた写真 1ー2

 花野井さんのパパ活が広まって数日。

 教員にはまだ知られていないものの、ほとんどの生徒にその噂は広まってしまっていた。

 それに伴い、この数日間で変化もあった。

 花野井さんではなく、その周りに、だ。


 そしてその日も、事件は起きた。


* * *


 「あ、ごっめぇん。花野井さんいるの気が付かなくてさぁ」


 一人の女生徒が、花野井さんの頭めがけて水筒の水をぶっかけたのだ。

 ソイツは、数日前の騒ぎの時にもいたように思う。見覚えのある顔だ。

 彼女も花野井さんに注意を受けた者の一人のようで、恨みを買ってしまっているらしい。


 「おいお前、何してんだよ! いくらなんでも今のは___」

 「谷上くん」


 花野井さんは片手を上げて激昂げきこうする俺を制止。

 その女生徒に向き直る。


 「……別に気にしてないわ。次は気をつけてちょうだい」

 「はぁい。ごめんねぇ?」


 クスクス、と笑いを堪えながら謝る女生徒に、怒りがふつふつと湧き上がってきた。


 何笑ってんだこのブス。脳天かち割るぞクソビッチが。


 そんな俺のストレスは、心の中でボロクソに言ってやることで発散する。

 花野井さんが彼女に仕返しを求めてない以上、俺が勝手なことをするのは筋違いというものだ。


 ___それからも、同じような事態は続いた。


 何よりも辛いのは、黙ったままそれを傍観ぼうかんしていなければならない、ということだ。

 先日花野井さんから、「私は気にしていないから手出しはしないで」という一文が送られてきた。

 俺が何か行動を起こして、彼女の迷惑になるようなことだけは避けたかった。

 だから俺には何もしない。できないのだ。

 彼女が助けを求めるまでは、何かをするつもりなんてなかった。


* * *


 ある日の放課後。

 俺は花野井さんと話す機会を作ろうと、同じクラスの生徒全員が帰宅するまで下駄箱で待機していた。

 花野井さんはいつも教室の掃除をして帰っているはずだから、今ならまだ教室にいるはず。

 

 最後の一人が下駄箱に到着したのを確認し、俺は足早に教室に向かう。

 目的地までは数十秒で辿たどり着き、すぐにドアを開けようとして___とどまった。

 

 ドアの隙間から見える彼女は___泣いていたのだ。


 目は酷く腫れて、その綺麗な頬は涙で湿ってしまっている。

 嗚咽おえつは廊下にまで響いていた。


 ああ、そうか___と。

 

 考えてみれば当然のことだ。

 あれだけ他の生徒から、大勢の人からイジメられ、辛くないわけがないのだ。

 今まではそれを上手く隠していただけで。


 それを見ると、俺は我慢なんてできなくなっていた。

 

 ……ダメだろ、こんなの。


 俺は花野井さんから聞いた話を思い出す。

 親のこと、家庭のこと、パパ活のこと。

 パパ活を肯定するつもりは毛頭ないが、そこに至るまでの経緯を聞いた。

 辛かった。悲しかった。そんな彼女の胸のうちを聞いた。

 

 何も知らないで、いじめて、笑いものにして……俺にはそんなやからが許せない。


 俺はスマホを起動させ、二度と使うことなどないと思っていた連絡先に電話をかけた。

 コールから数秒で彼女は出る。


 「___もしもし、三谷みたに。今日、時間あるか?」



____________________



 最後まで読んでくださりありがとうございました!

 評価や★、コメントなどで応援していただけると嬉しいです(_ _)


 伏見ダイヤモンド

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る