転生奴隷 せっかく異世界転生したのに呪われた奴隷ってどう言う事!? しかたがないからアシスタントのAIに無双してもらう

玄野紺

序章

第0話 プロローグ

 時間は7時。光一は機械のように正確に目を覚ました。彼の部屋は質素で、テーブル、イス、ベッド、必要な家具以外は何もない。彼の人生の退屈さがそのまま反映されていた。コーヒーを飲みながら、彼は今日も同じルーティンが続くことを憂いていた。

 深いため息が彼の口から漏れた。彼はしばらくコーヒーカップを見つめながら、どこで人生の選択を間違えたのかと言う、これまで何度考えたのか分からない問いを再び考えていた。


 光一にはかつて、宇宙飛行士になるという夢があった。そのために彼は勉強に打ち込んだ。遊びの時間は自ずと減り、学習にその大半を捧げた。しかし、大学受験には失敗。家庭の事情から浪人は許されず、結局は普通のサラリーマンの道を選んだ。気がつけば、周囲には誰もいなかった。

 

 

 朝食を食べ、部屋を出て、電車を乗り継ぎ1時間以上かけて出社した。

 会社では、外資系クライアントのための重要なプロジェクトがデッドライン間近まで迫っており、皆が焦りと緊張でピリピリしていた。特に光一の上司は彼に過度なプレッシャーをかけていた。昼食もろくに取れず、コンビニ弁当を机で食べながら仕事を続けた。光一は自分の能力を最大限に発揮出来るように努めたが、どれだけ頑張っても結果はいつも同じ。評価されることは無かった。その事の繰り返しが余計に彼を無力感に苛まれさせた。


 ようやく会社を出たのは22時過ぎ。これから1時間以上もの帰路が待っていると考えると、憂鬱な気分がより一層増した。彼にとって、賑やかな街の光はただうるさく感じるだけだった。

 

 歩きながら、彼は頭の中で人生の選択を考えていた。家族も友人も恋人もいない。気がつけば35歳。こんな人生に意味はあるのか……


「ああ、死にてぇ〜」


 彼が自然と独り言をつぶやくと、空が突如不自然なほど明るくなり神秘的な旋律が耳に届くかのような感覚がした。彼は驚きながら空を見上げた。何か光るモノが空から落ちてくるのが見えた。


 「隕石か……」


 と、彼は呆然とその光を見つめた。空気がゆっくりと揺れ、周囲の風景がぼんやりと光に覆われてゆく。光は次第にこちらに近づいている様に見える。隕石が近づくにつれて、その輝きはますます強くなり、光一の視界を完全に白くした。恐怖心はなかった、どこか他人事で、このままこの場に止まればどうなるのだろうかと、ただただ呆然とその光を見つめていた。


 

「まさかな……」


 隕石に当たる確率は宝くじの1等に当たる確率よりも高いと言う説がある。

 

「確か150万分の1とかだったような……」


 正確な数値は忘れたが余程の幸運? がない限り起こり得ない確率である事に変わりない。

 無駄な雑学を思い出しながら光を見ていると眩しさが増すにつれ、彼の人生が走馬灯のように駆け巡った。子供のころの夢、高校時代の友達、初めての仕事。しかし、彼は自分が幸せだった瞬間をひとつも思い出せなかった。



 隕石は光一の頭上に直撃した。衝撃で彼の意識はプツンと途切れた。

 

 光一の一生は何も成せないまま終わった。




 

――――――


 


「ボウズ、早く起きろ!」


 脇腹に強い衝撃を受けて咳き込みながら目を覚ます。


「痛っ……」


 光一は突然の痛みに耐え、蹴られた方向に目を向けた。そして、見知らぬ男がいる事や身の回りが見知らぬ場所であることに驚きながらも、自分の身を守るために身を起こした。


「えっ……誰……ここはどこ? ……んっ???」


 光一が目にしたのは粗末な木造の暗い部屋だった。しかし、彼の知っているものと雰囲気が少し違っていた。映画やドラマのワンシーンで見るようなどこか西洋の中世のような雰囲気がした。壁は荒々しい木材で出来ており、部屋の隅には古びた陶器が積み上げられていた。


 そして、彼の周りには2人の子供たちがいた。部屋の中は汚く、家具らしいものは見当たらなかった。風によりガタガタと小屋全体が音を立て、隙間風が吹き込む中で悪臭が漂っていた。床は冷たく、歩く度にキシキシと音を立てる古い木の床板だった。



 「何寝言ぬかしてんだ、ガキが! 働かねぇと飯のタネにもなんねぇんだからな!」


 と無慈悲な声で言ったのは、ゴツい体に無精髭を生やした中年の男だった。


 「ほら、支度してサッサと外に出て来い!」

 

 そう言い残すと男はドアをバタンと閉め外に出て行った。



 光一の頭は混乱していた。恐らく隕石にぶつかって死んだはずなのに、どうしてこんな場所にいるのだ。


 「何が起こった?」

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