祖母の頭痛
黒月
第1話
20年以上前のこと。私の祖母は健康を絵に描いたような人だった。高齢にもかかわらず畑仕事に精を出し、月に一度は祖父と旅行に出かけていた。
その祖母が、祖父との旅行の帰りから強い頭痛を訴えた。慌ててかかりつけの医院やら脳外科を受診するも原因はわからなかった。
私や家族が心配していたが一向に良くなる気配はなく、本人も沈みがちになってしまった。
一週間程過ぎた頃、祖父が気晴らしにと、旅行の写真を現像に出し祖母に見せた。
「治ったらまた旅行に行こう」と、祖父は写真を差し出した。
先日、友人夫婦と共に登山で有名な山に旅行した時のものだ。祖父はカメラが趣味だったので、風景や野鳥など写真は大量にあった。
一枚一枚祖父母と共に見ていくうちに、祖父の表情が凍りついた。登山口で友人夫婦と祖母が並んで写っている。3人とも笑顔で写っておりよくある写真だが、祖母の額から頭にかけてべったりと、真っ白いもやがかかっていた。
「これは現像に失敗したんだろう」と、祖父は写真を引っ込めた。そういえば額の辺りが痛い、と祖母は言っていた。私には写真と、祖母の頭痛と何か関係があるような気がしてならなかった。
ほどなくして祖母の体調は回復し、以前のような元気を取り戻したが、あの写真については祖父にいくら尋ねても答えてはくれなかった。
祖母の頭痛 黒月 @inuinu1113
ギフトを贈って最初のサポーターになりませんか?
ギフトを贈ると限定コンテンツを閲覧できます。作家の創作活動を支援しましょう。
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます