月と雪と眼鏡の縁

藤泉都理

第1話




 ゆきがふる。

 いつもいつも。




 あわゆき。

 かわきゆき。

 きりゆき。

 こおりゆき。

 こごめゆき。

 こなゆき。

 ささめゆき。

 ざらめゆき。

 しめりゆき。

 たまゆき。

 はいゆき。

 はなびらゆき。

 べたゆき。

 ぼたゆき。

 みずゆき。

 もちゆき。

 わたゆき。




 いつもいつも、

 ゆきがふる。

 ふりつづける。

 つもらないゆきが。











「ああ。変わらないなあ」


 庭に佇んでいた少年は短い赤髪をつまんでは、無造作に放った。

 じんわりと涙が込み上げる。


 この雪に触れて髪の毛の色が変わらない人間は特別ではないのだ。

 この雪に触れて髪の毛の色が変わる人間は特別なのだ。

 銀の色に変わる人間は。


「兄さまは」


 変わったのになあ。

 


 











(2023.7.28)



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る