第3話

 まえがき

 本日は二話同時更新で今話は二話目です。

 前話を見てない方は前話からお読みください。




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「コイツ……!!」

「待ってエーシス」

「止めないでお兄ちゃん! ソイツ殺せない!」

「彼の対戦相手はマナナンだよ」


 そう、今この場で戦っているのはマナナンだ。外野の僕たちがいくら抗議したって、このデュエルのメインはマナナンなんだ。


《わっちゃあのターン、ドローデス》


 マナナンが静かに、微塵も同様もなくターンを開始する。


「言っておくが死神を倒そうとしたって駄目だぜ? 攻撃力が0故に攻撃できないが耐久力が0故に決してお前の攻撃では死なない! ぎゃははは!」

《言いたいことはそれだけデス?》

「――……なんだと?」


 マナナンの言葉で固まったともじろーをマナナンは無視をする。


「ど、どうすればいいのお兄ちゃん!?」

「この場合の対処法は五つ」

「え、五つもあるの!?」


 攻撃でも死なない死神を退場させる。

 生贄を選択させるデッドエンドの排除。

 生贄にさせられる前に若者たちを先に倒す。

 死神を揃えられる前に相手のメンタルをブレイクさせる。

 こちらも特殊勝利の設定が付いたカードを使用して先に条件を満たして勝利する。


「そんなカードをマナナンが待っているかどうかだけど……」

「そんなことは不可能だ! 初心者がそんなカードを持っているわけがねーからなぁ! ぎゃははは!!」

「あ、死神が駄目なら若者の方なら――」

「馬鹿め! デッドエンドって言ってるだろぉ!? 生き残っている若者を倒しても生贄としてカウントされるんだよぉ! そしてジャンルカード『ホラーパラダイス』の設定によってシチュエーションゾーンに置かれているホラー系シチュエーションカードは設定の対象にならない!」


 五つある策の内二つが対処済みってことか。


「お前はもう詰んでいるんだよぉー!!」


 ――だけど。


《果たしてそれはどうデス?》

「……なんだと?」

《オープニングフェイズにジャンルカード『鋼鉄の運命』を展開するデス。このカードの設定を開示することで、わっちゃあは1ターンに一度デッキから鋼鉄と名の付いたキャラクターカードを手札に入れることができるデス》


 特定のカードをデッキから補充するサーチ能力が付いたジャンルカード! コンボの始動に最適なカードだ!


《わっちゃあはデッキから『鋼鉄の守護神ガーディン』を手札に加え、このカードの設定を開示するデス》


 鋼鉄の守護神ガーディンの設定は、自分ステージゾーンにいるキャラクターカードが相手のステージゾーンにいるキャラクターカードの人数より少ない場合、このカードを特殊演出させることができる登場設定!


 さながら絶望的な人数差を前に現れた守護神の如く!


《更にわっちゃあは手札からキャラクターカード『熱血少年タクミ』を一般演出権を使って登場させるデス》


 赤髪で活発そうな少年がガーディンと呼ばれたロボットの隣に登場する。ロボットと少年……まさかこの組み合わせは!


《ガーディンの設定を開示デス。ガーディンは近くにいる善の心を持った人間を自ら選び、守護神のパイロットにすることができるデス》


 ステージゾーンにいるキャラが動く!


『少年いやタクミよ……我と共に世界を救うぞ!』

『分かったぜガーディン!!』


 ガーディンのカードと重なるようにタクミが上に乗る。さながらロボットに乗るパイロットのように。彼らは一つとなり、悪を滅ぼす守護神が悲劇が蔓延る死神の墓地へと舞い降りた。


《鋼鉄の守護神ガーディン・クロス・熱血少年タクミの完成デス》

「攻撃力、耐久力共に10だとぉ!?」

《クロスした瞬間、タクミの設定が開示されるデス。人類の救世主のために創り出されたタクミは、その叫び声によって新しい武器が生まれるデス》


 つまりタクミの設定によってデッキから『救世器』と名の付いたシチュエーションカードをサーチすることができる!


《わっちゃあはデッキから『救世器イビルデストロイヤー』を手札に加え、そのままミドルフェイズに移行してシーン展開するデス》

「おい、なんだそのカードは!?」

《今から説明するデス。タクミがクロスしているクロス元のガーディンを対象にイビルデストロイヤーを使用するデス。イビルデストロイヤーの対象にされたガーディンはわっちゃあのターン終了時に使用済みゾーンに送られるデス》


 だがその代わり、イビルデストロイヤーにはとんでもない設定が存在している。


《イビルデストロイヤーの設定開示デス。対象にしたガーディンの現在の攻撃力以下の相手キャラクターカード全てを強制的に消滅させるデス》

「――は?」




 ◇




 ――ナンダ、アレハ?


 突如として舞い降りた鋼鉄の巨神に目を奪われる死神と生贄に恐怖していた若者たち。そんな彼らを前に彼の巨神は宣言する。


『我はガーディン……守護神ガーディン!』


 悪を滅する善なる神。

 弱き者のための神。

 悪にとっての死神。


『残酷なる運命諸共滅ぶがいい!!』


 救世器イビルデストロイヤー……とどのつまり超巨大なバズーカの発射口から光が溢れ出す。これぞまさしく救世の光!


『行くぞタクミ!』

『イビルデストロイヤアアアアアア!!!』




 ◇




『あれ、俺らも巻き込まれるんじゃね――』


 そう言って若者たちすらも光によって飲み込まれていき、残ったのは死神も若者も滅された墓地だけとなった。


「……は、あ?」


 凄い、一気に相手の盤面を消し飛ばした!


「だ、だが若者たちが使用済みゾーンに送られた瞬間デッドエンドの設定により第二から第五の死神が現れる!」

《だけどその死神たちはともじろーのメンタルを守ってくれるデス?》

「……え、えーと」

《耐久力が0だから攻撃はそのままメンタルへと直結するデス》

「それに第一の死神もいないから特殊勝利は満たせない!」

「ともじろーの勝利はこれで潰えた!」


 マナナンが刑を執行するようにゲームを進める。


《クライマックスフェイズデス! わっちゃあは鋼鉄の守護神ガーディン・クロス・熱血少年タクミで相手プレイヤーのメンタルに攻撃デス!》

「や、やめろおおおおお!!」


 巨神がともじろーに向かってパンチを繰り出す!


「ぎゃああああ!?」


 ともじろー。

 MP40 → 30。


《メンタルダメージを一回与えたことによってともじろーは所持しているハプニングデッキから一枚、ハプニングカードを引くデス》

「ぐっ……」

《それは今発動できるハプニングカードデス?》


 マナナンの言葉にともじろーが悔し気に俯く。どうやら今このタイミングで発動できるハプニングカードじゃなかったみたいだ。


「だが次のターンなら……!」

《次のターンは来ないデス》

「なにっ!?」

《ここでわっちゃあはクライマックスフェイズ時に開示できるカードの設定を開示するデス》

「……え!?」

《わっちゃあはガーディンを対象に手札からシチュエーションカード『鋼鉄の絆』をシーン展開するデス》

「これ以上、これ以上何をする気だああああ!?」

《これは山札を上から五枚めくり、その中から鋼鉄の名の付いたカード一枚につき追加攻撃できるシチュエーションカードデス!》


 つまりこの戦い、鋼鉄と名の付いたカードを三枚以上引ければマナナンの勝ちだ!


《一枚目ドローデス!》


 ――鋼鉄の殲滅龍ドラーディ。


《二枚目ドローデス!》


 ――可憐な幼馴染アカネ。


《三枚目ドローデス!》


 ――鋼鉄のファーザーロボ。


《四枚目ドローデス!》


 ――冷静な宿敵アキラ。


「引くな引くな引くな……!」

「鋼鉄と名の付いたカードはこれで二枚!」

「あと一枚引ければマナちゃんの勝ちー!」


 そしてマナナンの手がデッキの一番上に置かれる。


《そして五枚目デス!》


 そうしてマナナンが引いたのは――。


《――鋼鉄猫シャイ、デス! これで引けた鋼鉄カードは三枚、ガーディンは更に三回追加攻撃ができるデス!!》

「三回の攻撃だとぉ!?」


 仲間の力を借りたガーディンの拳に絆が宿る!


《もう自分の身を守れるキャラもいないデス。鋼鉄の守護神ガーディン・クロス・熱血少年タクミの一回目の攻撃デス!》

「ぐううううう!!?」


 ともじろーがハプニングカードをドロー。だけどどうやら今発動できるカードじゃなかったようだ。


《二回目の攻撃デス!》

「あびゃああああ!?」


 二回目のハプニングカードのドロー。


「ハプニングカード……『消えるアイデア帳』……相手のカードを一枚選択して使用済みゾーンに置くハプニングカード……」

《でも攻撃宣言には関係ないデス》

「う、うわあああああああ!!?」

《最後の攻撃デス!》


 これが通ればメンタルを0にすることができる。その時点でハプニングカードを引けず、そのままメンタルブレイクだ!


《これでともじろーのメンタルブレイクデス!!》


 妨害は……当然、ない!


「ぶげらあああああ!!?」




『マナナン・マクリールVSともじろー』

『マナナン・マクリール WIN!』




 ◇




「ま、負けた……そんな馬鹿なことが……!」

「やーいざーこざーこぉ!」

「やめなってエーシス」

「嘘だ嘘だ……! そんな、お前らは初心者の筈だろ!?」


 ともじろーの言葉によって僕たちは顔を合わせる。そしてともじろーに向かって肩を竦めた。


「な、なんだよ」

「まぁ確かに初心者だけど……ねぇ?」

「……マナナンは僕の仲間で、僕の所持金と共有してるんだよ」

「だ、だから……?」

《お金の力で強いカードを手に入れるまでパック開封をやったデス》


 いやそうだけど言い方ぁ!


「ぐ、ぐ……これだから金持ちの暴力って奴はあああああ!!!!」

『あ!』


 なんか謎の捨てセリフを吐きながら逃げ出していったぞ。


 :まぁ……でもなぁ

 :初心者狩りって言ってもなぁ

 :ちょい実力的に初心者より毛が生えた程度なんだよな


「まぁなんかトラブルもあったけど……今度は私の番だよ!」

「よし今度こそやろうか!」

《またパックを開けるデス》


 そうして、僕たちは再び混沌王に没頭する。

 だけどこの時の僕らは知らない。


 ――楽しくプレイしてた日々の終わりは……意外と早くやってくるということを。




 ◇




「な、なんなんだ……なんなんだそのカードはああああ!!?」

『これでお前はメンタルブレイクだ……』

「ぎゃああああ!?」


 ローブを纏った男の攻撃宣言によってともじろーが倒れる。そしてともじろーの体に変化が起きる。ともじろーの体から一枚のカードが現れ、ローブの男の手に飛んで行ったのだ。


『これで……二枚目』

『まだまだ遠いなぁ』

『リフェレーか……』

『どうも』


 もう一人のローブを纏った男が現れ、親し気な様子で声を掛けてきた。


『あと九十八枚かぁ』

『計画は進行し始めたばかりだ……』

『そうだねこれは俺も頑張らないとな』

『そうだ……我が結社『カオスティック・ギルティア』のために』

『我が結社『カオスティック・ギルティア』のために』


 地面に倒れているともじろー一人を残し、そうして彼らは消えた。


 ――次なる獲物を探すために。




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 あとがき

 関係ないですけど毎回ともじろーのことをとらじろーと書いてしまい、修正するのに手間取りました。


 ※マナナンのキャラ一掃の部分をちょっと修正しました。

 ※展開に変わりはありません。

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