第六話:神様を探すことになったのですが......
......ここは荒れ果てた村。
魔将軍ホガイルの襲撃によりそこに住む民と居合わせていた冒険者全員が犠牲となり、
今では瓦礫と灰だけが残った場所となっている。
そこに邪神捜索の為にやってきていたラッツェル率いる騎士団とゴウーダ率いる冒険者たちが訪れ、
現在犠牲となった人たちの丁重な埋葬と瓦礫の片づけを終えたところだった。
彼らから見ても村の惨状はあまりのも酷く、完全な復旧は見込めないと見ている。
「ラッツェル騎士団長さんよ、大丈夫なのか? 灯りは獣をおびき寄せるぞ」
「ゴウーダ殿。問題ないよ、明るいうちに僕の部下数名に周囲の探索をさせたけど魔族どこか獣の一匹も出なかったそうだ」
「やっぱあの魔将軍と邪神の仕業かねぇ?」
「どうだろう・・・ただ、魔将軍と邪神がここで戦いを行ったのは確かだ、それはもうこれだけの被害をもたらす程にね・・・」
「恐ろしい限りだぜ・・・王都だけじゃなく、他のところでこんな戦闘が起きちゃ被害はとんでもない規模になりかねないぞこりゃ・・・」
改めて片づけが終わった村の状態を見て思った。
一つの戦闘だけで村の一つが消滅するという事実を彼らは目の当たりにした以上、
これが王都または他の町に起こるとなれば被害はどれほどのものになるのか、それを考えるとゾッとする限りである。
そんな事を考えている時だった、衛生兵の一人が二人の下へと駆け寄ってくる。
「ラッツェル団長! ここにいらっしゃいましたか!」
「あぁ、どうしたんだい?」
「ハッ! 例の少女が目を覚ましました!」
「やっとこさか、服装と持ち物を見て冒険者と思えるがはてさて・・・」
そうゴウーダが言うと共にラッツェルたちは少女が居るテントへと向かう。
小屋ほどの大型のテントについて垂れ幕を退けて入ると、
そこには簡易式のベッドに上半身だけ起き上がらせている少女の姿が見えた。
「目覚めたようだね、あぁ起き上がる必要はないよ。僕はラッツェル、太陽鳥騎士団の団長を勤めている」
「よう、俺はゴウーダ。お前さんが冒険者ならこの名に聞き覚えはあると思うがな」
「・・・あいつはどこ?」
「あいつ・・・もしかしてフードを被った男の事かい?」
「そう・・・! あいつは何処!? 倒したの!?」
「ここには居ねぇよ。大方ここから去ったってところか?」
「追いかけないと・・・!」
少女はベッドから降りようとした、だが地面に足を付けると共に足どころか全身に力が入らずバランスを崩して倒れそうになる
「あっ・・・!」
「おっと・・・! 無理をしても無駄だよ。
君の全身は骨折や内出血が酷くて治癒魔法が扱える隊員や冒険者の人たちでさえ治すのに一苦労したんだからね」
「あいつを追いかけないと・・・村みたいに皆が・・・」
「大丈夫・・・なんて気休めは言えた義理じゃないけど、君のその様子を見るとこの村に何か思い入れがあるようだね」
ラッツェルは少女をベッドに運び、安静にさせる。
「この村は・・・少し前に立ち寄って世話になってただけ・・・でも・・・こんなことになって言い訳じゃない」
「だな。この村は前々から魔王軍からも狙われていたが、まさか邪神までもが出てくるなんて・・・」
「邪神? 邪神って色んなところで聞いた・・・」
「説明すると長くなるけど、今回の一件・・・どうも邪神が絡んでいる可能性がある」
「・・・通りで、あいつが強い筈・・・あいつを野放しにすると次はどこかの村や町が危ない」
「その為に俺たちはあいつを追いかけてはいるが・・・嬢ちゃん、あいつが向かった先とかわかるかい?」
ゴウーダの問いに少女は首を横に振った。
それを見てゴウーダは後頭部を掻きながらテントの外に出る。
「ねぇ、君の名前は? そういえば聞いてなかったけど・・・」
「シロ」
(色の名前・・・? 単純すぎるし、荷物の感じからして身寄りがあるように見えない・・・やはり彼女は・・・)
「シロか、よろしくね」
「うん。私もあいつ追いかける、だから君たちについてく」
「わかった。でもまずは君自身を治すことに集中して、治り次第一緒に行こう」
「うん」
そう約束をしてシロは改めて横になり、そっと目を閉じた。
それを見守ると共にラッツェルはテントの外に出る。
「お前ら! 今日はここで夜を過ごす! 各自それぞれ就寝を取りながらそれぞれ交代で見張りを立てろ!」
「「「応ッ!!」」」
「よし、各自これにて一時解散! 明日こそ奴を、邪神を追うぞ! 起床は―――」
「その事だけどゴウーダ殿。出発は少し遅めで頼めるかい?」
キビキビと今回の遠征でついてきた冒険者たちに指示を出すゴウーダの背中を軽く叩きながら、
ラッツェルが横から顔を見せるように出してくる。
「あん? どうしたラッツェル騎士団長さんよぉ、なんかあるのかい?」
「あぁ。実は―――」
ラッツェルは先ほどのシロとのやりとりを話した。
それを聞いたゴウーダは少し苦い顔をしながらも、どことなく納得したような顔に変わった。
「まぁこのまま置いて行くのも癪(しゃく)ってもんか・・・」
「あぁ、それに・・・彼女は奴隷だった可能性がある」
「あ? どういうこった?」
「あくまで僕の勘、推測でしかないけどね・・・彼女の荷物を調べても身内に関する代物が一つも見当たらない」
「たまにあるだろ、そんなの」
「にしても、荷物がその場限り・・・今日生きていればそれで構わないような荷物の少なさがある・・・」
それを聞いてるゴウーダの顔はどこか怒りに濁った感じで歪んでいく
「じゃああの子はあのクソッタレな国、ルゥカーの奴隷市場から来たってのか?」
犯罪国ルゥカー
国......といっても、それほどの土地もなく、産物の流通などは補給以外無い完全に外界より孤立した島国である。
中央には大きく煌びやかな豪華な城が立っており、その城下町も煌びやかに光り輝いている。
しかし、それはあくまで島を美しく見せるだけのものであり、
そこに住む者たちは過去に大罪を犯して逃げてきた者などが流れ着く場所であり、
血生臭く暗い現実だけがそこに渦巻く狂気の島国。
そんなルゥカーにある奴隷市場では幼い子供たちや成人して間もない女性が人間・エルフ・獣人とそれぞれ
本土で攫ったり、借金の肩代わりとして連れてこられている。
「ルゥカーは王都だけじゃなく他の国でも問題視されている場所だ」
「あのいけ好かない男が居る場所だからな・・・」
「反英雄イェーガー、か・・・」
「あー! この話は止めだ止め! これから就寝って時に夢見が悪くなる」
「すまないゴウーダ殿・・・」
「騎士団長さんもとっとと寝ろよ! 嬢ちゃんの回復を待って出発だ!」
「あぁ。・・・ありがとうゴウーダ殿」
礼をいうラッツェルに何も言い返さず、ただ背中を向けた状態で手をひらひらと軽く掲げながらその場を去って行った。
――――――・・・
「カイコ。明るくなってきたぞ。」
「ん? んん~・・・」
あれから疲れていたせいか思いっきり熟睡してたようだ。
何より、ガーネットたちの存在もあって安心感があって気持ちが少し楽になっていたのもあるだろう・・・
体を軽く伸ばし、上半身をグッグッと捻りながら寝袋から出る。
僕が動くのに気付いたのかファングも起き上がり、僕の体にうずくまって顔を擦る。
「おはようガーネット、オパール・・・特に異常とかなかった?」
「問題ない。」
「異常は感知されませんでした。」
「なら良しだね。さっさと出発の準備に取り掛かろうか」
かれこれ自身の体質のせいで何度も異世界に転移された結果、
こういう撤収作業などには手慣れたもんでさっさとテントを収納し、
貰ったバッグに色々と詰め込んで背負う。
「重たいだろうカイコ。御使いに持ってもらうといい。」
「いやいいって・・・それにこのぐらいの荷物なら余裕で動けるよ。
黒フードくんには周囲の警戒ともしもの際の対処に当たってもらうし」
「そうか。」
傍に居た黒フードくんはどこかちょっとだけ残念そうにしてるのをチラッと見えながらも、
バッグを持って森の中を進んでいく・・・
――――――・・・
それから数十分ほど歩き続け道中進んでいると何やら金属同士が弾ける音が聞こえてくる。
耳で聞き取れる範囲だが小さく何を言っているのかよくわからないが声も聞こえ、何やらただ事ではなさそうに感じた。
昨日遭遇したあの声がデカい筋肉ダルマみたいなのがまた出てきたのだろうか?
避けて通りたいが、妙に気になってしょうがない・・・う~む・・・
「カイコ。この先の様子を透視したが、複数人の人間と一体の人型モンスターが戦闘をしている。」
「人型のモンスター?」
なんか黒フードくんと出会った時を思い出す。
確かあの時の黒フードくんも一対複数だったよな・・・
なんでだろう、なーんか運命的なものを感じる・・・
「ああ。見た感じだが昆虫種のモンスターで君の世界で通る種で答えるなら・・・ハチだ。」
「ハチ」
「そうだ。」
「スズメバチ? クマバチ? アシナガバチ? それともキイロスズメバチかオオスズメバチ?」
「それは・・・う~む・・・どの分類だろうか?」
「少なくともカイコ、あなたから頂いた記憶には該当するハチの種ではありません。」
「なら新種の子かぁ~・・・」
「あと、貴方がよく知る方ではありませんからね?」
「それは理解してる。・・・まぁちょっと期待はあったけどね・・・」
こうなってくるとますます気になるな・・・
もうこの際だし、そのハチくんと鉢合わせるとするかぁ!
あくまで自然に、あくまで偶然を装って出会おう、うん。
――――――・・・
ガーネットとオパールが透視と戦闘音を頼りに足を進めていくと、
そこには複数人の人間・・・いや、多い!?複数人っつーか団体さん!
小学校のクラスひとつ分程度の人数が居る!多っ!
もっとこう4~5人程度かと思ってたのに!
ハチくんが15人ほど倒してるとはいえ、まだ半分近く残ってるやん!
いや、ハチくんもハチくんで普通に強いって!まぁ察する物はあったけど・・・
うちが援助してる養蜂場もといハチミツ専門店を務めてるあの子らもハチで歴戦の戦士だけども・・・
過酷な戦場を生き抜いた元兵士だけどもさぁ・・・
「くっ・・・! 化け物め・・・! なんて強さだ!」
「化け物か・・・お前たちのような血の気の多い冒険者とかいう人間の方が余程化け物に見えるがな」
「何をぉ・・・!?」
えっ普通に喋ったよあの子・・・
凄いイケボだよ、超有名な声優さんでも付いてるのかってぐらいイケボだよ。
擬人化したら絶対金髪の美青年にされちゃうぐらいイケボだよ。
異世界って本当に時折声の性質が高いよな本当
僕ら一般人では到底出せない声出してくるよな、いや本当心臓に悪いってマジで・・・
「舐めるなぁ!」
相手の男が剣を振りかぶった。
けど、素人みたいに大振りで振りかぶってるもんだから簡単に回避されてカウンター食らってるし・・・
「ぎゃっ!?」とか間抜けな声上げてるし・・・
こりゃあれだな、優勢であるのは頷けるかもしれん。
相手が幾ら何でも素人すぎる。
戦いの動きに無駄があるし、手に持っている武器も質はそんなに悪くないが見るからに量産された剣ばかり・・・
あれじゃあアクションゲームの序盤に出てくる雑魚兵士となんら変わらん。
「おのれぇ!」
「全員囲め!全方面から攻撃すれば奴とてひとたまりもない!」
愚策だわ。
えっ・・・何その頭悪いワンパターンのフォーメーション。
僕も大概ガンガン行こうぜ派で人の事あんまり言えないけどさ・・・
あんなの・・・あーもう、なんかイライラしてきた。
「パンドラシステム起動・・・」
物陰に隠れている中、ライフル銃を作り出した。
さすがの僕も知る有名なセミオートライフル銃、M1ガーランド。
弾丸は既に装填されており、アイアンサイトで適当に一人を狙う。
「スゥー・・・フッ!」
―――パァンッ!!!
発砲音と共に弾丸はハチくんを囲む一人の横っ腹に命中した。
「ぐあっ!?」
被弾して走る衝撃と痛みで倒れた者を見て、他の奴らはそいつの方を見る。
隙だらけだ。
―――パァン!パァン!パァン!!!
残る奴らを出来る限り狙撃して倒していく。
顔は外すかもしれないからなるべく当たり所が大きい胸や腹などを狙う。
セミオートライフルの強みはなんといっても強力なライフル弾を連射出来るところだ。
ボルトアクションも悪くないが、こういう複数人相手の場合はこちらの方が強い。
「な、なんだ!?」
「どこから狙撃を!? 何人いる―――ぎゃっ!?」
・・・いや、さすがに狙撃場の動く的より酷い。
こんな戦場とも言える真っ只中、ただそこに突っ立てパニックでジタバタしてるだけ
もう狙ってくださいと言ってるようなもんだ。
しかも、さっきの台詞が聴こえたけど、もしかしてこちらの狙撃位置に気づいてない?
嘘でしょ・・・かなり遠くの狙撃ポイントあるなら訳が違うが、あんたらとは目と鼻の先で撃ってるんだぞ?
もう茂みから顔出せば一発でわかる所から撃ってるんだぞこっち!
一体なんだこいつら、恰好からしてどこぞの兵士かバザールで見かけた冒険者とかいう奴らだと思ったのに・・・
これじゃあそこいらの農民となんら変わらん、てんでド素人だ。
・・・びっくりするぐらい呆気なくて素っ気ないけども油断して顔は出さない。
あくまで慎重に、やるならとことん最後までだ
――――――・・・
結局、全員倒してしまった・・・
いや何? この呆気なさ。
これじゃこっちが一方的に殺戮したみたいだよ・・・
「そこに居る者、そこから出てこい。話をしたい」
何とも言えない虚しさにモヤモヤしてるとハチくんから声が掛かってきた。
これ以上隠れていても仕方ないし、素直に茂みから姿を見せる。
「人間? いや、それにしては後ろに連れているのは・・・」
「こちらの声が届くのならば武装を解いてほしい。こちらに敵意は無い。」
「ふむ・・・良いだろう」
あっガーネットの声が届いた。
ということは神の声が聞こえる奴だな。
「大丈夫か? なんでまた人間なんかに襲われてたの?」
「・・・? 妙なことを聞く。人間からしてみれば私は狩られる対象に過ぎない」
なんとも素直でハッキリとした回答をするなこの子・・・
見た目もハチを二足歩行にさせただけでなく、足とかは人間のようなふくらはぎを持っていて、
ところどころではあるが人間と同じパーツが見える。
でも一番目立つのは背中にある大きな球根のような物体だ。
色鮮やかで派手な代物だが、僕が知るハチの種類でそんなものを持っている奴は知らない。
「う~んじゃあ質問を変えよう。彼らはどこからやってきた?
これだけの大人数でこの森を攻略するにしても多すぎる気がするけど・・・」
素人程度の性能しかないとはいえ、この森を通過するにしても人数があまりのも多すぎる。
何か異変的なものを感じてはいる。
「どこから来た? そんなの―――・・・いや待て、確かに奇妙ではある」
「何か心当たりでも?」
「心当たりか・・・確か日が二度上り下りを繰り返した時だったか、
この森に妙なモンスター二体が入ってきたのを見かけた」
「モンスター? 特徴は?」
「まるで木が蛇のように動いているような奴で、
もう片方は人間のような装備をしていたが明らかに人間とは違う体・・・そう、白きワニの姿をしていたな」
「白きワニ?」
それを聞くと某都市伝説を思い浮かべる。
確か都市の下水道に白い皮をしたワニが居て、
点検にやってきた職員や住処を求めてやってきたホームレスを食べてしまう猛獣だとか・・・
そんな事を思っている時だった。
ガーネットとオパールが明らかにその話を聞いて反応しだした。
「記録データに一致反応。自然の管理を任された神と御使いの特徴と断定。」
「その二体はどちらに向かいましたか?」
「うん? いや、その時以降は見えていない・・・お前たちはそいつらを探しているのか?」
「はい。実は―――」
オパールはハチくんにこれまでの経緯、そして神や御使いの存在のことを全て話した。
自分も重ねて説明をした。
自分の事、自分が元々どこに居たのか、過去以外はある程度話した。
「ふむ・・・つまり、お前たちは神とそして異世界からやってきた人間であり、
私は神の声が聞こえる特別なモンスターであるというわけか・・・」
「一定の個体数ではあるが私たちの言葉を理解する者が居るのは確かです。」
「君が見かけたという二体の捜索に協力してほしい。拒否するならばそれでも構わないが。」
「ふむ・・・少しだけ時間をくれ、“皆”と話し合う」
「えっ? 皆?」
ハチくんが少し後ろに下がると背中に背負っていた球根が開き、
綺麗な花粉のようなものがキラキラと地面に降り注がれ、それと同時に背中から小さなハチくんが沢山出てきた。
・・・いや、子持ちやったんか君ぃッ!!?
「皆、先ほどの話を聞いていたと思うから聞く。彼らに同行した方が良いと思う者は?」
「人間ト同ジ、デモ違ウ」
「探シ物、見ツカル様ニ助ケテ上ゲヨウ」
まぁ子供のように愛らしい声でカタコトな言葉を発しながらもこちらに協力的な感じであるのはわかった。
「親モ、コノ森出タイッテ望ンデル、出ル機会」
「親ノ為ニ子ガアル、皆望ンデル」
「皆・・・わかった、そうしよう」
「結論は出た?」
「あぁ、私はお前たちに付いていく。但し条件が二つ、私と皆を全員連れてこの森から抜けること、
そして森を抜けた後も同行を許すこと、これが私が出す条件だ」
「わかったその条件乗った。それじゃあ名前とかはある?」
「無い。あっ、いや・・・グレート・ビーとかそういう名前で冒険者たちは私をそう呼んでいた」
「グレート・ビーねぇ・・・完全に向こう側が勝手に付けた呼称だなぁ・・・」
「ではカイコ。君が名付けるのはどうか。」
「それが適任かと。」
嘘でしょ、またここでネーミングタイム入るの?
ただでさえ虫人間・・・インセクトに名付けすんの?
うちの会社だとそのインセクトに因んだ種族名で通してるんだけど・・・
「あ、うん、でもさ、彼の許可なしに命名するのは―――」
「構わない、好きに呼んでくれ」
おいぃぃぃ~~~・・・逃げ場ゼロかよぉ・・・
兎に角どうしよう、もうネーミングセンスゼロの自分が通さなきゃいけないのこの案件?
「わかった。けど今は時間も惜しいところだから君だけね?」
「それで構わない」
「イイヨ~」
「好キニシテ~」
えぇいハチくんの後ろで愛らしい声を出すんじゃないよ可愛いなチクショー
兎に角だ、兎に角なんとか知識を絞りつつ的確なネーミングを見つけるしかない。
しかも時間押してるから早々に決めなきゃならんとは難易度高すぎませんかねぇ?
――――――・・・
「ホーネットか、わかったその名前貰い受ける」
「大丈夫かカイコ。豪く疲労しているが・・・」
「大丈夫、大丈夫・・・知恵絞りすぎてしんどくなっただけ・・・すぐ収まるから・・・」
結局、単純明快にスズメバチの英名を抜き取ってだけで終わっちまった・・・
ゲームなどの制作とかしている人がモンスターの名前を特徴的であり、
独特性のあるネーミングセンス光らせてるの羨ましく思えてくるわ・・・
「ホーネット~」
「親ノ新シイ名前~」
「あぁ、これからはホーネットが私の名前だ」
まぁ・・・気に入ってくれてるようで何よりだわ・・・
「それじゃあ、神と御使いの捜索を開始しますか!」
「了解した。随時透視を使って周辺を探知する。」
「この森は私が詳しい、まずは私が二体を目撃した場所に案内する」
「そっから足取りが掴めれば上々なんだけどねぇ」
「上々・・・とはなんだ? 異世界の言葉か?」
「ん? あぁ・・・上々っていうのはこの上なく良いって意味を持つ言葉だ」
「なるほど・・・では上々であることを祈りながら進むとしよう」
ホーネットを先頭に僕らは森の中を進み始めた。
――――――・・・
......同時刻、森の出入り口辺りにて。
「報告します。森に潜入した冒険者たちからの連絡が定時連絡を過ぎてもありませんでした」
「つまり、“やられた”ってことですかな?」
「そうであるかと・・・」
「全く、やはり加護を受けていないC~D級の冒険者を雇うべきではなかったのですよ。
エルフ王も人間を変に評価する・・・」
テントの中で二人の男達が話し合っていた。
一人はフードや包帯で顔を隠していて見えず、
もう一人は顔立ちと体格は良いが太々しい態度が目立っていた。
「非合法で雇える者たち故、質に関してはここまでかと」
「で、あろうな。ギルドからも見放され行き場のない下級の落ちぶれ冒険者・・・質も悪けりゃ扱いも容易い」
「仲間のエルフたちを導入しますか?」
「いやまだだ、まだ冒険者どものストックは残っている。
それから夕方までに片付かなければ“アレ”を放て」
「御意」
そう言ってフードの男はテントを後にした...
「ふむ・・・さて、エルフ王も人が悪い。邪神を捉え、己の物にしようなどと・・・」
男は考える。
かの邪神は、その見た目こそ木のようであり蛇のようであると・・・
そんな代物をエルフ王は何故欲するのか? 単純にエルフに縁の深い自然に関するから?
それともあの邪神には何かエルフ王が欲する何かが秘められているのか・・・
「まぁいい・・・この捕縛作戦が成功すれば私はさらに上の地位に立て、十分すぎる富を得られる」
男は野心家であった。
妻子も作らず、ただエルフの国に利益をもたらすことだけを考え、
時には暗躍をし、人間を見下してもいるエルフの中では異質な存在ではあった。
その気質が買われたのか、今回エルフ王から直々の依頼を受けてここに立っている。
「さて、どう動こうか...。」
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