社畜から卒業したんだから異世界で自由を謳歌します
灰崎 An
プロローグ
000:プロローグ
小さい時から自分なら最高の人生が送れるものだと思っていた。
しかし現実はスポーツをやっても凡人レベル、高校や大学は普通よりも少し下のところに進学した。
もちろん友達も多くなく、彼女だって人生で1度もできた事なんてない。
そこから表向きは大きな企業に就職するが、入ってみたわかった生き地獄とは、ここの事を言うのだと。
「何をやってるんだ!! 納期を守れないって、営業先の事を考えているのか!!」
「は はい………申し訳ありませんでした」
「謝れば何でも許されると思ってるんじゃねぇよ!! この仕事が終わるまでは、家に帰るんじゃねぇぞ」
「は はい………」
入った会社は、まさしくブラック企業。
32歳になったにも関わらず、俺は上司から子供なのかと怒鳴られ続け、頬はコケて目の下にはクマ。
こんな酷い顔で彼女なんてできるわけがない。
今日も………と言うよりも丸3日も家に帰る事もなく仕事をし続けてやっと、3日振りに会社を出れた。
あまりにも外の空気が美味しすぎて目から涙が出てきた。
そんな自分に本気でヤバいと思いながらも、もう逃げる事なんてできやしないと感じている。
「あれ? 宮島じゃねぇか………うわ!? なんて顔をしてんだよ!!」
「ありゃ? 木島か………」
フラフラになりながら街を歩いていると、前から見た覚えのある顔がヌッと覗き込んできた。
その顔は中学高校と同じ学校に通っていた、同級生の〈木島 幸雄〉だった。
確か木島は中学高校でサッカーをやっていて、大学でも名門と言われるところに行っていた様な。
そして大手企業に就職して、俺とは比べ物にはならないくらいに稼いで結婚もしたと聞く。
「フラフラじゃないかよ………ちょっと飲みに行かないか?」
「えっ? あ あぁ………そうだな」
俺の顔を見て何かおかしいと思ったみたいだ。
木島は俺を連れて近くの居酒屋に飲みに行った。
久しぶりに人と食事をしたら、こんなに美味しいものなんだなぁと素直に感じる。
「そんなに辛いってんなら辞めちまえよ!! お前が不幸と感じるところに、頑張っている必要は無いんだよ!!」
「でもなぁ。他の連中もいるし、俺だけ辞めるわけには………」
「他の人間が耐えられる範疇と、お前が耐えられる範疇は同じだって思うじゃねぇ………なっ。お前の為にも辞めようや」
確かにそうだ。
周りの人たちが耐えられるからと言って、俺が耐えられるなんて決まったわけじゃない。
こんなにも簡単な事に気がつけないなんて、俺は本当にダメになっていたんだな。
「よしっ!! 明日にでも辞表を出してくるよ!!」
「そうだな。俺もできる事は何でも手伝うよ………少し休んでから仕事を探そうや」
俺も覚悟を決めたんだ。
あのクソ上司から何を言われようが俺は明日、絶対に辞表を出して自由になるんだ。
完璧に自由になった俺は木島と別れて、自分の家に帰るべく地下鉄乗り場にいく。
酒が入っている為なのか、体がフワフワして辞めれるか、気持ちとしても楽になっている。
「あれ? なんだろう、景色が横になって………」
俺は体は自然と力が抜けていき、柵のない線路に倒れ込んでしまった。
目の前からくる電車の光は、生きてきた中で最も明るかった。
言ってしまえば、この光は神様の御幸なのではないかと悟ってしまうくらいだ。
「そっか………死ぬのか」
案外死ぬって言うのは、こんなもんなんだろうかと思いながらも眼を閉じようとしたが。
死にたいなんて思っちゃいない!! 死ぬくらいなら死んでやるくらいの気持ちで起きあがろうとした。
しかし既に体は自由が効く状態ではなく、ここにきて上司を、さらに恨む事になるとは!!
* * *
俺が次に眼を覚ましたところは、何もない真っ白な世界だ。
俺は死んだのか? 死後の世界って事は、見るからには地獄ではないだろうから、ここは天国だろうか………。
「んーっと天国ではなくて、人々が言うところの………神界? と言えば良いのかしら」
「えっ!? だ 誰っ!?」
「落ち着いてっ!! 私は女神〈ララトゥーナ〉よ」
「ララトゥーナさ 様?」
目の前にいるのは美しい女神? いや、まさしく後光のせいが顔は確認できないけど、きっと美人だろう。
「美人!? そんなに褒めても何も出ないわよ!!」
「お 俺の考えてる事が分かるんですか!?」
「えぇ女神ですからね。そ そんな事よりも本題です!!」
「本題ですか?」
「えぇ貴方が、どうして神界にいるのかと言う事です!!」
確かに死んだはずの俺が、どうして神界にいるのか気になりはするが………。
何とも夢を見ているようで、今だに神だの神界だのが信じられないでいる。
「貴方が、ここにいるのは………私が間違って殺してしまったからです!!」
「はっ!? 女神様が、俺を殺した?」
「ち 違うんですっ!! とても辛そうだから、別の世界にでも転生させてあげようかと思ったんですけど………まさか希望に満ちた、明日が訪れるとは………」
何だろうか。
こんな早とちりで殺されては、命がいくつあっても足りない。
「その通りです!! なので、どうにか特殊なスキルを お渡しするので………転生してみませんか?」
「ま まぁ死んだものは生き返らないでしょうけど………それなら俺の欲しいスキルは貰えますか?」
「えぇ貴方が亡くなったのは、こちらのミスのせいですので、スキルの希望は叶えますとも!!」
「それなら俺が欲しいスキルは………
―――《コピー》っ!!
俺が欲しい能力は触ったモノやスキルをコピーできる能力だ。
これさえあれば不自由なく異世界ライフを送れるんじゃないかと思ってる。
「了解しました。コピーを授けます、それと言語翻訳も付けておきますね!!」
「あぁ。現世から別れるってなると、意外と未練が出てきちゃうなぁ………両親に感謝を伝えておいて」
「分かりました。それでは異世界ライフを楽しんで下さい」
まぁ現世にも未練はあるっちゃあるが、死んでしまったものは仕方ないからな。
とにかく社畜を卒業しんだ、これから異世界ライフを満喫してやる!!
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