第71話 オアフ島の本願寺
汐未がフィレンツェから帰るのと入れ替わるように、健治と智子の二人が新婚旅行に行くことになった。
キャバレーは元旦以外は年中無休営業で、マネージャーが休みを取れるのは、俗にニッパチと言われる2月か8月しかない。店長の八重樫に次いで筆頭マネージャーとなった健治は2月の末に1週間休みを取って、ハワイに行くことにした。
「健治、あんた式はどうするの」
「オアフ島のワヒアワ本願寺で式を挙げて、あとはサーフライダーホテルで寝るだけだな」
「ハワイに行くのに、教会じゃなくてお寺なの?」
「姉ちゃん、うちは浄土真宗だよ、それに智子の家も浄土真宗だから、本願寺しかないだろ」
「へーえ、ハワイにも本願寺があるんだ。それはいいけどさ、寝るだけって何なの、朝から晩まで、智子とアレばっかりやるつもりなの」
「へへっ、アレもやるけど、寝るのはワイキキのビーチだよ」
「それは寝るとは言わないんだよ。アレをやるのは sexusl intercouse で寝るのはsleep で、ビーチで日光浴をするのは sunbathine っていうんだよ、それくらい、マリリン先生に習ったんじゃないの」
「札幌ではマリリン先生に sexusl intercouse も実地で習ったけど、釧路の教室は、
アーノルド・シュワルツェネッガーみたいな筋肉ムキムキのおっかない先生だから、3回に1回はサボってるな」
「何だって!実地で sexusl intercouse を習ったっていうの。智子に言い付けるわよ!
そんなこんなでいろいろと問題はあるけれど、健治と智子はハワイに向けて飛び立った。
すると立て続けに高弁と順子も、ニュージーランドに行くことになった。
この二人の場合、順子のお腹が4か月目に入り、パスポートは二人だが、実質は2.5人の旅行である。よくニュージーランドの入国検査官が見逃してくれたと思う。
高弁と順子が成田空港から飛び立つ日、高弁の親友の沢村と、沢村の相棒の絵里香が見送りに来ていた。この二人も「エリカとサワムラ」というコンビを結成以来 相性が良くて、近いうちにどこかへ行くことになりそうな気配である。この二人が行くとしたら、上海以外は考えられない。その時は多分二人とも、トレンチコートにサングラスを掛けて、回りをキョロキョロと見ながら、小型カメラでパチリ、パチリ、と写すに違ない。そうなったら中国の秘密警察に捕まって、天安門広場で処刑されるか、人民大会堂の地下に幽閉されるか、どっちかだろう。
その前に、中国の領事館がビザを発給してくれるかどうかが問題であるが。
いずれにしても新婚旅行と、sexusl intercouse とは、ややっこしいものである。
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