星屑のレディアント《Bonus Episode》
シラヌイ3
ENJOY!スローンライフなカデナ岬観光!
第1話
セミの鳴く頃のことである。
夜の世界。されど一日中夜の世界。
時間としての昼と夜があるのだとセミのおかげで知った。
そんなことはどうでもいい。ソラ達は今、窮地に陥っていた。
クーラーが突然として動かなくなり、扇風機で暑さを凌いでいた日の事。
部屋に涼しい風を循環させる目的で首を回していた扇風機を下に向け、固定したまま風を独占する者がいた。
「クルミ~、扇風機元の状態に戻して~」
返事が返ってくることはなく、只管扇風機の羽が回る音だけが響く。
「クルミ~?」
書類に汗が零れないように、適度にタオルで拭いながら仕事を続けるソラ。
マリアは既に生きるのを諦めてうつ伏せで沈黙している。
「もう限界です!」
クルミが大の字で叫び、くねくねとうねり始めた。
「ドミニオンの生徒会室に行きます!」
「クルミ!?」
「ここは生命活動に支障があります!虐待です!暴力です!」
唯一つの希望である扇風機を独占しておきながら、暴虐の王は吠える。
「こんな所に居ては、クルミは溶けてしまいます!メルトダウンです!」
暑さで水分不足のせいか、大声は骨に響く。
このままドミニオンに向かえば、扇風機が仕事を再開できると一瞬考えた。
しかし、クルミが来たことでメノが付き添い、仕事に支障をきたし困るコトネの姿が想像できた。
「だめ。クルミはここで食い止める」
「!」
――例え、貴方を倒してでも私には行かねばならぬ場所がある
大の字で扉の前に立ちふさがるソラ、
両手を牛の角のように頭にあて、突進の構えをするクルミ。
いや、クルミに突撃されたら私死んじゃうよね!?
気づいた時にはもう遅い。
クルミは闘牛の如く加速して、ソラの腹部へと突撃する。
「もぉぉぉぉぉおおおおおおおおおうっ!」
これは牛の鳴き声でしょうか。いいえ、高木ソラの雄たけびです。
うずくまり、ぴくぴくと痙攣してスタンするソラ。
勝利の歓声をあげながら、首に巻いていたタオルを振り回すクルミ。
「アイムウィナー!ウィーアーレジスタンス!」
(個人なのか、組織なのか……)
こんなことを繰り返していては体がウルキオラになるのも時間の問題である。
どうしたものかと、そのまま携帯を取り出しSNSを眺めるソラ。
――カデナ岬、整備完了!ヴァリアス最速の海開き!
(海かあ……)
カデナ岬なる場所を知りはしないが、太陽が見えることから表なのは間違いない。
出掛ける場所としては飛行機も使うことになる為、あまりにも面倒。
(うう……)
ただ唸ることしかできない。私は無力。暑さに負けた愚かな大人なんだ……。
インターホンが聞こえた。
誰も向かおうとしない。
再度ならされるインターホン。
誰も出ようとしない。
鳴る、鳴る、鳴る、鳴る、鳴る。
恐ろしい程の連打。
恐怖しながら扉の鍵を外すと、目にも止まらぬ勢いで開かれた。
(これ絶対ガチャガチャしてたよね……)
「どこの誰といるの先生。アマリリス?それともドミニオンで見つけた新しい女?」
目に闇を宿し、千切れんばかりに伸びた口角のリンだった。
「!」
「せんせ?」
「リ―――――――――――――ン!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます