寝取られた後の三角関係? ――トラウマだらけの恋だけど――
他津哉
第一部 初恋も好きな人も奪われた情けない僕
第一話「負け犬の僕」
◇
家に居るのが気まずい……辛い。家に居場所が無い。だから僕は家の外、学校に居場所を求めた。僕の名は
「はぁ……」
「どうしたの木崎くん?」
教室で声をかけて来たのは
「何でも無いよ……それで、この間の話なんだけど、やっぱり家は……」
「別に無理強いはしないけど、その……私の家って厳しいから男子を家に上げるのは難しくて、そうなると図書館になるけど?」
彼女は家に連れて行きたく無かった可能なら外の方が良い。だって家には俺をイジメて楽しむ兄達が居るからだ。
「僕は構わない、むしろ家の外がいいかな」
「でも一度くらい、ううん、ごめん……何か事情が有るよね」
「助かる紅林さん、いつか家にも呼ぶから」
そう、兄達が居ない時なら大丈夫だ。そう思って返事をした。だが僅か二日後に僕の平和は崩れ始めた。
◇
それから紅林さんと二人で図書館で勉強を続けていた。普段から勉強しているのが僕らの日常だった。僕も彼女も互いに成績は学年一位を取ったことも有るトップクラスで普段から二人で切磋琢磨し合っていた。
「おやおや? 悠斗じゃないか~!!」
「あっ……広樹兄さん」
だが、そんな僕らに嫌な声がかけられた。見た目がインテリ風なメガネ男子、体系は中肉中背それが俺の兄の一人、木崎広樹だ。図書館に来るなんて滅多に無いのにと僕は警戒感を強めた。
「何だ、こんな簡単な問題集か、これじゃあFランにしか入れないぞ」
「あの、悠斗くんこちらは?」
「えっと――――「はじめまして悠斗の兄の広樹です。クラスメイトかな?」
僕の言葉を遮るように兄は紅林さんの隣に座った。彼女も驚いているが兄はお構いなしだ。いつもこうだ。もっとも、もう一人の兄より幾分か常識も有るし表向きは善良な人間だ、そう表向きは……。
「は、はい……」
「可愛い子じゃないか、もしかして悠斗のカノジョ? 振られたのにもう二人目なんて、やるじゃないか見直したぞ」
「かっ、可愛いなんて……」
紅林さんは顔を真っ赤にしているけど僕は一気に真っ青になった。もう一人よりマシなだけで広樹も僕をオモチャにして遊ぶのが好きなクズだ。今まで兄達には幾度となく酷い目に遭わされて来たから僕は恐怖で震えた。
「ち、違う、彼女はクラスメイトで!!」
だから大声で否定した。もう目の前の男はニヤリと口角を上げていた。だから僕は気になっていた紅林さんの前で必死だった
「くっくっくっ……そんな大声を出したらダメだろ悠斗? ここは図書館だ」
「そうだよ木崎くん……図書室は静かにだよ?」
だが、それから更に三日後、紅林さんは遂に僕の家に来てしまった。そして僕にとっての悲劇で兄達にとっての喜劇は始まった。
「じゃあ、僕の部屋に……」
「待った、二人とも勉強を見てあげるよ」
強引に押し切られる形で紅林さんを家に連れて来てしまったが、広樹兄さんは僕らを待ち構えていたかのようにリビングで待機していた。
「えっ、でも悪いですし……」
「そうだよ兄さん――――「大丈夫、それに俺、T大の三年なんだ」
そう言って兄は毎回のお得意の学生証を見せびらかす。この兄は日本トップクラスの大学三年生……つまり超エリートで僕の学年一位なんて霞むレベルの秀才だった。
「すっ、凄い!! そうだったんですか!?」
「まあね、勉強が人より出来るだけさ、ま、もって生まれた才能かな」
そして過去にも見た事が有るような光景が目の前に広がり始めた。違うのは目の前の兄が広樹という点だけだ。
「でも兄さんサークルで忙しいし――――「教えてもらおうT大生だよ!! すご~い、そんな凄い人がお兄さんだったんだ!!」
「俺なら大丈夫、じゃあ始めよう。いいよな悠斗?」
「で、でも……う、うん……」
そしてそこからは早かった。いっそ笑えるぐらいに簡単に推移して行った。最初の数日は三人で勉強していたが気付けば僕はいつの間にか眠っていて目を覚ますと二人は居なかった。
◇
「あれ? 僕は……?」
「おい悠斗、こんなとこで何してんだ邪魔だぞ」
「誠一郎兄さん?」
椅子を蹴られて起きると目の前に頭を明るい赤色に髪を染めた筋肉質な男が居た。その男が俺のトラウマでもう一人の兄、木崎 誠一郎だ。大学一年で広樹兄さんと違い頭は悪いがスポーツ推薦で有名な私立大学に通っている脳筋だ。
「んなとこで寝てんな邪魔だろ、てか勉強か広樹兄ぃにも勝てないバカが無駄な努力するもんだぜ」
「うん、それより紅林さん、じゃなくて広樹兄さんは!?」
僕は急いで玄関に行くが紅林さんの靴も鞄も何も無かった。嫌な汗が背中を流れるが次の誠一郎兄さんの決定的な言葉で僕は打ちのめされた。
「あっ? 兄貴なら数分前に車で出てったぞ?」
「えっ!?」
「隣に女乗せてたけど新しい女か? ま、いいや、何か飯ねえ?」
「そ、それより二人がどこに――――「知るかよボケ!!」
そう言って胸倉を掴まれて僕は放り投げられ床に叩きつけられた。筋骨隆々な上に身長も頭一つ分高い兄に僕が力でかなう筈が無かった。どうやら今日は特にイライラしているようで口答えしただけで、この様だ。
「ゲホッ、ゴホッ……ううっ」
「ったく、飯くらい用意しとけよ、せっかく
それを聞いて僕は心臓が止まりそうになった。そしてドアが開き入って来たのは僕と同じ高校の制服を着た金髪の少女だった。彼女は
「先に行かないで……あっ!? ゆう……と!? 何で誠一郎くん!? 話が違う!!」
「ちっ……うっせえな……ったく……」
「げほっ……ごほっ……ゆう、ひ?」
「大丈夫なの悠斗!?」
「う、うん……あっ……優姫?」
そして去年まで僕の恋人だった子だ。最近会っていなかったし何より髪の色が変わっていた。去年まで黒くて艶やかな髪色だったのに……今はくすんだ金色だ。
「なに、人の女に気安く声かけてんだよ!! お前も分かってんだろな!?」
「あっ、いや……その、髪が……」
だが兄を無視して思わず呟くと優姫が恥ずかしそうに頬を染め僕に話し出した。
「ああ、これ誠一郎くんが、そうしろって言うから……」
「そ、そうなんだ……」
その表情は僕と付き合っていた時の明るく快活でリードしてくれていた面影は無く、大人しくなって媚びているように見え僕は二重の意味でショックを受けた。
「似合うかな? クラス離れちゃったし……あはは」
「ちっ、行くぞ
その言葉が僕に追い打ちをかける。茫然とする僕を無視して強引に優姫の腕を取ると上の階へ行って数分後には二人の激しい情交の声が聞こえ出した。まるで僕に聞かせるように家中に響き渡っていた。
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