白南風と三秒

佐藤凛

二秒

「ねぇ、私の好きなところ三秒で答えてよ。」

彼女はデート中にそんなことを僕に問いかけた。ぶっちゃけて言うと、こういう質問はすごく面倒くさい。

少しでも彼女の意向にそぐわないと彼女は急激に不機嫌になり、数日は口をきいてくれない。そもそも三秒という時間が無理だ。

早すぎる。そんなに僕の脳内はよくできていない。それに彼女の好きなところなんてありすぎて困ってしまう。

そんなに早く早くと迫られると、遂に僕の頭はオーバーヒートして動かなくなってしまう。なんてことを考えながら彼女の方を見てみた。

彼女は少しむくれていた。やってしまったと思った。彼女からの要望は三秒以内で答えること。とっくに三秒を過ぎていた。

僕は言い訳がましく彼女に言った。

「ごめんね。好きなところが多すぎて、答えられないや。言おうと思えば言えたんだけど、僕はそんな中途半端に君への想いをこたえたくないんだよ。」

この答えがお気に召したのか、彼女はさっきのむくれた顔を忘れて

「何それ、うれしいんだけど。」

とはにかんで答えた。夏の温かい風が僕の体温を少し上げた。

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