Honey Sucide~ハチミツ心中~
千代田 白緋
ある女の独白
突然だが、その男はハチミツをラッパ飲みする人だった。
「なぜ、そんなことをするの?」
と私は布団から顔を出しながら訪ねた。すると
「君は布団に埋もれる時、男に抱かれる時。どっちでもいいけど、その瞬間、なに考えてるんだ?」
私は質問に質問で返すのはどうなんだろうと思いながら、答えを思い浮かべた。何を考えているか、改めて聞かれると、そこには実に冷静な自分がいた。
「今、頭に浮かんだのが俺がハチミツを飲む理由だ」
そう間髪入れずに言った彼はまたハチミツに口をつけた。髪も染めていなければ、ピアスだってしていない、黙っていれば、真面目で遊んでいなさそうな男。それにしても何とも素っ気ない。さっきまでの熱狂がウソだったかのよう。ハチミツで艶めいた唇に視線が動き、思い出してしまった。さすがに生娘のように顔を赤らめることなんてないけれど。正直、彼の質問の答えはすぐに出ていた。けれど、別に彼だって私の返答を期待している訳ではないだろし、お互いをお互いにそこまで興味ないのだから口を閉じた。私は布団の中に頭から足の爪先まで納め、ふわふわの繊維を感じることにした。何もかもを受け入れてくれる気がした。溺れるなら、やっぱり男の身体と布団の海がいいと本気で思った。
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